作品紹介

〈本の達人〉北村薫が読み解く小さな昭和史

明治42年に生まれた父の青春を遺された日記をもとに描き、〈昭和〉という時代を描く「いとま申して」シリーズの第二弾。今回、著者の父・宮本演彦は慶応大学予科から、遂に本科へと進む。そしてこの物語の主役ともいえるふたりの知的巨人が登場する。
その一人が西脇順三郎。慶應義塾大学文学部教授に就任、英文学史などを担当。『三田文学』を中心に「PARADIS PERDU」を仏文で発表するなど批評活動を開始してきたが、本書の舞台となる昭和10年頃には詩集『Ambarvalia(アムバルワリア)』で詩壇の萩原朔太郎、室生犀星の称賛を受け、詩誌『詩法』の創刊に参画。その英文の授業は、実に刺激的なものだったという。
もう一人の巨人は、国文学者・民俗学者として知られる折口信夫。学生を連れてしばしば日本各地へフィールドワークに赴き、演彦青年もその薫陶を受ける。折口信夫門下生として関西旅行にともに赴くが、奈良、京都の風景の細やかな描写、何気ない日常の光景が、在りし日の大学教授と学生たちの息遣いをよみがえらせる。
西脇、折口師以外にも、演彦氏が、後に演劇評論家となる友人の加賀山直三とともに、歌舞伎に親しんだことから、市村羽左衛門、中村福助ら当時の花形役者たちのエピソード、そして徐々に色濃くなる戦時色も日常の光景としてつづられていく。
昭和初期を実体験的に知る重要な資料であると同時に、ひとりの青年の切実な悩みを吐露する青春の物語。著者曰く「当時の学生の姿を、このような形でとらえた本はあまりない」一冊となった。

書評・インタビュー

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担当編集者より
小説家としてはもちろん、〈本の達人〉として多くのアンソロジーや随筆集を上梓してきた北村薫さん。最近では母校の早稲田大学で教鞭を執り、出版や本にまつわる多彩な講義が学生にも大人気とか……。さて、本書は同じ大学でもライバル慶應に通う若き青年が主人公。実は著者自身の実父である宮本演彦(のぶひこ)氏の日記をもとにしたもの。西脇順三郎、折口信夫と出逢い、歌舞伎に親しむ一方、昭和初期の不景気や戦時色なども織り込まれ、決してほかでは読むことのできない〈小さな昭和史〉が完成しました。(M・K)
商品情報
書名(カナ) ケイオウホンカトオリクチシノブ イトマモウシテ
ページ数 352ページ
判型・造本・装丁 四六判 上製 上製カバー装
初版奥付日 2014年11月25日
ISBN 978-4-16-390168-8
Cコード 0093

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