担当編集者より

著者がお茶の稽古に通う25年間を綴った名エッセイ『日日是好日』が、黒木華さん主演で数年前に映画化されたことを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。著者・森下典子さんの半生が描かれた映画ですが、この映画化において、森下さんは単なる原作者というだけではなく、制作陣が茶道を誰ひとり知らないという状況下、やむにやまれず、茶道指導者として撮影現場に参加することになります。おそらく、原作者がスタッフとして参加するのは、映画史上初めてでしょう。いつも一人きりで仕事をしている作家が、独特の流儀があるプロ集団の中に飛び込んだ日々を綴ったのが本書です。

本当はお茶を全く知らない先生役の樹木希林さん、強面だけれどもチャーミングな大森立嗣監督など、個性的な面々がずらり登場。本書の特長は、俳優だけではなく、それぞれの持ち場で自分の仕事に真摯に向き合うスタッフのことも丁寧に描かれていることです。職人さんたちの心意気も読みどころ。映画の舞台裏は、決して利潤や効率のためだけに動いているわけではないことが分かります。

解説は、あさのあつこさん。「この本を読む前と後では、日常が微妙に違ってくる」と絶賛してくださいました。本書のカバー絵は、森下さん自ら描いたもの。ぜひ、イラストや本文口絵のカラー写真ページもあわせてお楽しみください。