アナザーフェイス×警視庁追跡捜査係
「アナザーフェイス」シリーズの立ち上げ…男から共感される男・大友鉄!
「うちでも警察もので文庫書き下ろしのシリーズをお願いできませんか、とご相談した当時すでに、『交錯』が連載中でした。鳴沢了シリーズが一匹狼というハードボイルドテイスト、追跡捜査係はバディもの、失踪課はチームもの、とそれぞれ色合いが決まっていたので、うちで書かれるものは違う雰囲気にしたいとお話ししていました。“女性にもモテて、影があって、へこたれない強い心を持つかのような男・鳴沢了”はあまりに格好良すぎて、『憧れるけど、僕は共感できないなぁ。こういう人ずるい!』と堂場さんにお酒の席で絡んだんです(笑)。堂場さんの作品は強い男! というイメージがあって、もう少し弱くて馴染みのある優しい男を主人公にできないかとご相談しました。イメージは、もし堺雅人がハードボイルドをやったら……というところから始まりました」
「大友鉄の経歴である元劇団員というのはそこからきたのでしょうか? 先見の明が素晴らしいです」
「よく、堂場さんは、ダスティン・ホフマンの『クレイマー、クレイマー』を挙げられますね。あの映画を発端にイメージを膨らませたそうです。事件はもとより、家族もの、子供の成長を通して刑事の姿を描いていただけたらと。
今までの作品は、父との関係不全、娘の失踪、といった家族に対する欠損が、物語の推進力になっているけれど、『アナザーフェイス』は大友の奥さんの死は決してトラウマにはなっていない。堂場さんの今までの警察小説の定型から少し外してみませんかとご提案したところ、タイトルは横文字にしたいとご提案いただきました。
(漢字2文字から離れた)アナザーフェイスというタイトルも、父と刑事、刑事と内勤、俳優と素の自分といった意味が込められています。装幀も、雰囲気を変えて、アメリカの郊外(サバービア)のようなイメージで作ってほしいとデザイナーさんに提案しました 」
「並べて改めて見てみると、装幀がTHE警察小説ではないですよね。ネガタッチになっているのが印象的です 」
「『追跡捜査係』シリーズの装幀は堂場作品には珍しくイラストですね」
「鳴沢了シリーズ、失踪課シリーズは黒のイメージ(写真)で白地がなかったので、イラストにしてインパクトを狙いました。ただ、2文字で白地だとシリーズが増えてくるとどうも似てくる……と2人して話して、4作目からシフトチェンジしました 」
「うちは後発だから、今までのシリーズとはイメージも違うし、カバーのイメージは既刊の作品とは変えたかった。唯一追従したところは中公文庫さんと同じ灰色の背色にしたことです。堂場さんのご提案だったのですが、ファンの方が買って家の本棚に並べたときに、そのほうがきれいなのではというお考えだったようです」
「あたたかな気遣いですね」