文藝春秋九十周年記念出版

丸谷才一全集 全十二巻

2013年10月より毎月一冊小説と評論を交互に刊行

〈編纂委員〉池澤夏樹 辻原登 三浦雅士 湯川豊

 

とにかく面白く、知的冒険に満ちた小説。通説を排して尖鋭、古今東西縦横無尽の評論。常に日本の現代文学をリードし続けた丸谷才一氏の仕事を網羅した全集が刊行されます。未刊行も含めた全小説と、主だった評論のほとんどを収録(選評、時評、匿名コラムを含む)。今なお刺戟に満ち論議を呼ぶ、溌剌とした全集です。

各巻内容紹介

巻名もしくはマークをクリックするとより詳しい内容がご覧になれます。
  • 第一巻(小説)「エホバの顔を避けて」ほか (第3回配本)既刊
  • エホバの命から逃げようとして果せず、神に従い裏切られた男──。聖書「ヨナ書」に材を取り、重厚なテーマと新しい文体で騒然たる議論を起こした処女長篇「エホバの顔を避けて」。その他、「贈り物」「秘密」「にぎやかな街で」「川のない街で」「男ざかり」「思想と無思想の間」の初期の七作品を収録。 [解説 三浦雅士]
    定価:5400円+税
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  • 第二巻(小説)「年の残り」「笹まくら」ほか (第7回配本)既刊
  • 六十九歳の病院長を主人公に、深い人生観が透徹した芥川賞受賞作「年の残り」。徴兵を忌避し、ラジオ修理工、砂絵師として戦時中を生き延び、戦後は大学職員となった男の過去と現在を精妙に交錯させ、戦後日本文学の金字塔と高く評価される中篇「笹まくら」。その他、「彼方へ」「初旅」「だらだら坂」を収録。 [解説 池澤夏樹]
    定価:5300円+税
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  • 第三巻(小説)「たった一人の反乱」ほか (第5回配本)既刊
  • 防衛庁への出向を断って民間会社に移った主人公は若いモデルと再婚するが、思わぬ波乱が待ち構えていた。社会と個人の錯綜した関係をユーモア溢れる筆致で描いた「たった一人の反乱」。「あの日、父が会った酒飲み坊主は山頭火か?」。文学とゴシップ、人生を巧緻に描き合わせた中篇「横しぐれ」と「中年」を収録。 [解説 辻原登]
    定価:5500円+税
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  • 第四巻(小説)「裏声で歌へ君が代」ほか (第9回配本)既刊
  • 中年の画商・梨田は「台湾民主共和国」の大統領就任式に出席したことを機に、「国家とは何か」を考え始める。上質のユーモアとエロティシズムを織りこんで趣向の限りをつくし、発表当時、社会現象のように語られた「裏声で歌へ君が代」。壁に映る樹の影から、幼少時の記憶まで遡っていく卓越した短篇「樹影譚」を収録。 [解説 辻原登]
    定価:5300円+税
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  • 第五巻(小説)「女ざかり」ほか (第1回配本)既刊
  • 大新聞の美人論説委員南弓子は、書いたコラムが元で、政府から圧力をかけられる。知恵を尽くした痛快な反撃を、巧みなストーリー展開で描きベストセラーとなった「女ざかり」。その他、短篇「鈍感な青年」「夢を買ひます」に加え、単行本未収録の「墨いろの月」「おしやべりな幽霊」「今は何時ですか?」を収録。 [解説 池澤夏樹]
    定価:5200円+税
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  • 第六巻(小説)「輝く日の宮」ほか (第11回配本)既刊
  • 気鋭の女性国文学者の恋を、現在の事件・風俗と源氏物語の謎を重ね、いくつもの異なった語りを駆使して描いた知的痛快作「輝く日の宮」。弦楽四重奏団の人間模様を描いた最後の長篇「持ち重りする薔薇の花」。さらに絶筆「茶色い戦争ありました」と、未刊行の習作「花田の帯」「うぐいす笛」を収録。 [解説 湯川豊]
    定価:5550円+税
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  • 第七巻(評論)王朝和歌と日本文学史 (第8回配本)既刊
  • 日本文学史を、政治史、西洋史に依らず文学そのものによって区分できるか? この課題に、勅撰集など詞華集を基準とする画期的な文学史を提唱した「日本文学史早わかり」。卓越した歌人であり、悲劇の帝王であった後鳥羽院を描いた「後鳥羽院」など、王朝和歌、源氏物語から宣長、芭蕉までを論ずる。 [解説 三浦雅士]
    定価:5400円+税
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  • 第八巻(評論)御霊信仰と祝祭 (第4回配本)
  • 「彼等はなかなか遊戯気分でやつてゐるんです」、徳富蘇峰は四十七士をこう評した。我が国で最も称賛され喜ばれた事件と芝居は、どのように成立したのか? 斬新大胆な視点で論じ議論を生んだ「忠臣藏とは何か」を中心に、芝居について、御霊信仰と祝祭、呪術と文藝など、日本人の根底にある前近代と土俗について考察する。 [解説 湯川豊]
    定価:5200円+税
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  • 第九巻(評論)夏目漱石と近代文学 (第2回配本)
  • 漱石と国家、そして「明治の精神」の関係を論じ、大きな反響を呼んだ「徴兵忌避者としての夏目漱石」。「坊つちやん」の罵り言葉から、ラブレー、バフチンに飛び漱石に迫る「忘れられない小説のために」など「漱石論」の集大成。さらに、尾崎紅葉から花袋、荷風、谷崎までの作家論により、日本近代文学の成立の曲折を考える。 [解説 辻原登]
    定価:5000円+税
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  • 第十巻(評論)同時代の文学 (第6回配本)
  • 石川淳の小説は「明治末年の文学革命に対する思ひ切つた反抗」であり、吉行淳之介「暗室」は「伊勢物語」と比較される。大江健三郎の「神話としての自分史」、「ロマンスの最も極端な形」である村上春樹作品……。大岡昇平、吉田健一、そして松本清張、司馬遼太郎まで。刺戟に満ちた同時代作家論。「日本語論」も併録。 [解説 三浦雅士]
    定価:5250円+税

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  • 第十一巻(評論)ジョイスと海外文学 (第10回配本)
  • 呪術と神話、英雄叙事詩とパロディ、言葉遊びとゴシップ……。ジェイムズ・ジョイスの文学を多層的に分析した丸谷氏のライフワークの集大成。さらに、ドストエフスキーからプルースト、ガルシア=マルケス、クンデラ、エーコ、グレアム・グリーンまでを論じ、世界の文学の現在を眺望する。 [解説 池澤夏樹]
    定価:5100円+税

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  • 第十二巻(評論)選評、時評、その他 年譜、書誌 (第12回配本)
  • 既刊
  • 芥川賞、谷崎賞など、文学賞の全選評。朝日新聞文藝時評(一九七三~七四)。六〇年代に書かれ保存されていた「侃々諤々」「大波小波」など匿名コラム、貝殻一平の筆名で書かれた読売新聞「大衆文学時評」。その他、「思考のレッスン」「文学のレッスン」などの講義。年譜・書誌(構成・武藤康史)を付す。 [解説 湯川豊]
    定価:5500円+税
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1925(大正14)年、山形県鶴岡市に生まれる。1950(昭和25)年、東京大学文学部英文科を卒業。国学院大学、東京大学などで教鞭をとりながら、小説、評論、翻訳を次々に発表。1968(昭和43)年に短篇小説「年の残り」で第59回芥川賞、72年、長篇小説「たった一人の反乱」で谷崎賞、74年、評論「後鳥羽院」で読売文学賞、85年、評論「忠臣蔵とは何か」で野間文芸賞、88年、短篇「樹影譚」で川端賞を受賞などなど、小説と評論の双方で常に現代文学をリードし続けた。また、書評、日本語論、軽エッセイなどの分野でも、多くの読者に愛された。 2012年10月13日、心不全で急逝。享年87。