アナザーフェイス×警視庁追跡捜査係

 

「僕の力を信じて現場に投入する人がいるんですから、 期待には応えたいと思います」大友

先ほども話が出ましたが、大友さんは特命のような形で、急に現場に放りこまれますよね。普段の仕事とのギャップが大きいのではないですか。

大友大きいです。いつもは、研修の準備などの地味な仕事が多いですから。一種の事務作業なんですよ。でも現場よりも、研修の仕事で刑事部の皆さんと会う時の方が、嫌な顔をされますよ(笑)。

沖田研修が好きな刑事なんかいないからだよ。だいたい最近は、研修をやり過ぎじゃないのか? どう考えても、いらない研修ばかりだけど。

大友そこは、長期的視点に立ってやっていますので、ご理解いただかないと。刑事にも、教養は大事なんです。

西川だけどお前も大変だよな。急に、全然関係ない現場に放りこまれると、白い目で見られるだろう。

大友そういうこともありますけど、仕事と割り切っていますから。

沖田ほら、お前はそういう優等生的発言しかしないから……。

大友それも分かっています。実際、あまりいい気持ちでは迎えてもらえていないと思います。現場の人にすれば、何で刑事総務課の人間が出てくるんだって感じでしょうし。でも、僕の力を信じて現場に投入する人がいるんですから、期待には応えたいと思います。

西川そのプレッシャーも大変だよな。

大友ええ……ないわけではないですね。というより、いつも感じています。

沖田だいたい、福原さん(※6)だって後山(※7)さんだって、やり方が滅茶苦茶なんだよ。テツには家庭があるのにさ。あれじゃ一種の嫌がらせじゃないか。

大友まあ、そこは何とか……。

沖田でも、苦労してるんだろう?

大友何とかバランスを取っていますから。助けてくれる人もいますし。

西川福原さんたちにすれば、現場を離れていても、大友の感覚を研ぎ澄ましておきたいわけだから。将来に期待してるんだよ。これも絆なんだ。

沖田何だかんだ言って、結局いいように使われてるだけじゃないのか?

大友大丈夫です。僕には、そういう意識はありませんから。ヘマをすると、遠慮なく怒られますけどね。

沖田テツ、お前、このまま特命の手伝いみたいな仕事を続けて、いつか捜査一課に戻るつもりはあるのか?

大友まあ、いずれは……今はまだ、何とも言えませんけど。

今の福原さん、後山さんの話ではありませんが、三人とも仕事の上で大事な仲間はたくさんいますよね。

沖田鳩山係長(※8)とか?

西川本気で言ってるのか?

沖田何もしないで、こっちの動きを見逃してくれてるうちは、いい上司じゃないか。

何か指示すると、ろくなことにならないんですよね?

沖田俺は何も言ってないからね(笑)。

西川鷹揚に構えている時はいいですよ。我々が自分で考える『スペース』を作ってくれているんだ、と思うようにしています。ただ、心配性なのが困りますね。心配するのは、自分の体のことだけにして欲しいんですけどね。

沖田俺は別に、あの人はいなくても構わないけどねえ。

西川組織上、そうもいかないだろう。

※6 刑事部特別指導官、後に第三方面本部長。大友の「守護者」。

※7 刑事部参事官。福原の後釜の「守護者」。

※8 追跡捜査係の係長。肝臓が悪いが、大食をやめられない。

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