- だいたいが世の中、いちばん嫌いな女がいちばん美味しいところを持っていくようにできているのだプレゼント
- わたしは朝食をみっちり食べさえすれば、夕食はゆで卵一個で十分、という体質の持ち主だ。貧乏生活が長かったから、肉体まで安上がりになったのかもしれない依頼人は死んだ
- コーヒーが運ばれてきた頃には、共通の友人を吊るしあげたおかげですっかり打ち解けていた。友情を深めるためにはリンチが一番だ依頼人は死んだ
- 仕事上、心にもない謙遜やお愛想をふりまかねばならないので、それ以外の場面では社交辞令は使わないようにしている悪いうさぎ
- どうやら金持ちと名のつく人種は、絶対に探偵には水分を与えようとはしないらしい悪いうさぎ
- わたしにはたくさん欠点があるが、支度が遅いと責める人間はいない悪いうさぎ
- これまでの人生、わたしが人気者だったためしは一度もない。鯉にエサをやって逃げられたことすらある暗い越流
- 長い間、ひとりで生きてきた女は、他のなにを信じなくとも、自分の神経だけは信じるべきだったのだ暗い越流
- 探偵などをやっていると、自分に寄せられるであろうクレームを先読みする癖がついてしまう。友だちが少ないはずである暗い越流
- トシをとるということは、疲労回復用の精力剤と、入浴剤と、湿布への出費が増大する、ということだ暗い越流
- 年をとって、うまくできるようになったことがひとつある。記憶に蓋をすることだ暗い越流
- 人間関係と書いて<りふじん>と読む。殺人犯かもしれない人間に、命を救われることもありさよならの手口
- 自分の容姿に対する幻想とは、十代でお別れしたさよならの手口
- わたしは直接、自分の目で見ることができる単純な景色が好きだ さよならの手口
- 世界の平和を望むなら、アドバイスなどしないに限るさよならの手口
- 新しい本の匂いはひとを励ます。時には、喪失の物語が喪失を包んでくれる静かな炎天
- いろんなことが起こりすぎるほど起きてしまう日もある。平穏で退屈な一日もある。どっちに転ぶかはおわってみなければわからない静かな炎天
- なにをアウトプットするかは自分で選びたい。たとえ相手が警察でも。静かな炎天
- 選択は終わった。時は進んだ。やり直しはできない。だとしたら、いまさら怯えてどうする錆びた滑車
- 目的のためでも手段は選ぶが、許される手段の上限も下限も自分で決めたい錆びた滑車
- ぬくぬくとした環境に長くいるとえぐみが出る。コーヒーも、人も錆びた滑車
- 気を利かせたつもりで大迷惑。いいひとはよくそういう真似をする。錆びた滑車
- 若く健康でなくては美味しいコーヒーにもありつけないのだ。錆びた滑車
- 贅沢は言わない。今年こそ、病院に担ぎ込まれませんように。調査料を踏み倒されませんように。依頼人が死にませんように。不穏な眠り
- 異論があるかもしれないが、わたしは本来、謙虚な人間だ。理不尽な命令に従う気はないが、お願いされれば話は別だ。不穏な眠り