累計740万部の国民的時代小説「密命[決定版]」シリーズ復活!
『密命[決定版]』シリーズ全26巻いよいよスタート!

『密命』【決定版】シリーズ刊行によせて

佐伯泰英

著者近影

「密命」シリーズ第1作『見参! 寒月霞斬り』に手をつけたのは26年も前、1999年1月のことだ。祥伝社文庫として日の目を見た。まさか26巻の大長編になるなど夢想もしなかった。『晩節 終の一刀』で完結したのは2011年12月だ。そして、14年後のただ今、決定版を新たに文春文庫から刊行し、この一文を認めている。作者にとって長い付き合いの作品であり、なんとも幸せなことだ。なにしろ出版事情が大きく変わり、五百ページを超える分厚い文庫本なんてもはや刊行できまい。かような状況下、文春文庫からの決定版刊行は大長編の物語を見直す貴重な機会である。

 日大芸術学部に入学した折、亡き母が「東京は知らんと」と言いながら私に従ってきた。新幹線もない時代、九州から東京まで長い旅路であった。そんな蒸気機関車の煙のにおいがする列車のなかで、ふと母が「薩摩国鹿児島藩島津家に追われて豊後国に逃れた小大名の家来がうちのご先祖様たい」ともらしたことがあった。あれこれと話したはずだが、この部分しか覚えていない。何十年後か時代小説を書き始めたとき、母のこの言葉を思い出し、長い物語誕生の冒頭部分になったのだ。

シリーズ紹介

豊後相良藩二万石の徒士組・金杉惣三郎は、かつて城下の直心影流綾川道場に学び、「相良の龍」と呼ばれるほどの剣の遣い手でしたが、藩主と共に遭遇したある出来事により、ふぬけを装って生きることに。

そんななか藩を揺るがす事態が起き、藩主たっての密命を帯びて江戸で浪人生活を始めた惣三郎の人生は大きく動き出してゆきます。

江戸でさまざまな人たちと縁を結びながら、職を得て家族で暮らし始める惣三郎と子供たち。

しかし惣三郎の剣の腕が放っておかれることはなく、ついには紀州と尾張の権力闘争にも巻き込まれ……。

著者初の時代小説であり、「剣豪小説であると同時に家族それぞれの絆、成長や挫折、喜び哀しみを描写してきた家庭劇」と著者自身が語る物語世界は、シリーズ累計740万部のベストセラーに。新たな装幀の決定版で復活します。

おもな登場人物

  • 金杉惣三郎  豊後相良藩の下級武士の出で、綾川辰信道場に学んだ直心影流の剣の達人。藩主である斎木高玖が八歳の頃から一年ほど、武芸指南役を務めた。以来、高玖とは特別な主従関係にある。
  • 金杉清之助  惣三郎の長男。
  • 金杉みわ  惣三郎の長女。
  • 斎木高玖  豊後相良藩藩主。読書を好む篤学の士。江戸藩邸で生まれ育った。
  • 冠阿弥膳兵衛  芝神明町に店を構え、廻船問屋なども営む札差の豪商。惣三郎とは家族同様のつきあいに。
  • お杏  冠阿弥膳兵衛の娘。芝鳶の半次郎と結婚するが死別した。
  • 荒神屋喜八  大川端で火事場始末を営む親方。脱藩した惣三郎を働かせる。
  • 西村桐十郎  切れ者と謳われる定廻り同心。
  • 花火の房之助  西村桐十郎の手下の岡っ引き。典型的な江戸っ子で、花火師の三男。

御江戸地図

密命地図

作品一覧

著者紹介

佐伯泰英

1942年、北九州市生まれ。 日本大学芸術学部映画学科卒。デビュー作『闘牛』をはじめ、滞在経験を活かしてスペインをテーマにした作品を発表。99年、時代小説に転向。「密命」シリーズを皮切りに次々と作品を発表して高い評価を受け、〈文庫書き下ろし 時代小説〉という新たなジャンルを確立する。2018年、菊池寛賞受賞。おもな著書に、「居眠り磐音」「空也十番勝負」「酔いどれ小籐次」「新・酔いどれ小籐次」「照降町四季」「密命」「鎌倉河岸捕物控」「吉原裏同心」「夏目影二郎始末旅」「交代寄合伊那衆異聞」「古着屋総兵衛影始末」「新・古着屋総兵衛」各シリーズなど多数。

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