2013.06.05 書評

活字の力、映像の魅力

文: 鈴木 吉弘 (映画プロデューサー)

『真夏の方程式』 (東野圭吾 著)

 僕と「ガリレオシリーズ」の出会いは、先輩プロデューサーに勧められたのがきっかけです。物理学者が主人公で、外国の探偵小説みたいに短篇で完結していて、トリックがよくできていて、キャラクターが立っている。テレビ向きなんだよ、と。それですぐに『探偵ガリレオ』と『予知夢』を買いに走りました。

 実をいうと、一番惹かれたのはタイトルだったんです。「探偵ガリレオ」というからには、事件がおきて、理系的な何かが絡んで解決していくんだ、というのがすぐに伝わります。素晴らしいタイトルで、ヒットのオーラが立ち上っていましたよ(笑)。

 ただ、ドラマの企画は局内では最初は見向きもされなかったんです(笑)。でも湯川みたいな魅力的な変人キャラは使えるかな、とずっと思っていて。その後、紆余曲折はありましたが企画が通り、福山雅治さん主演で、ドラマ「ガリレオ」と映画「容疑者Xの献身」を作ることが出来ました。おかげさまで大ヒットしましたし、福山さんも〈湯川=ガリレオ〉がご自身の当たり役だと思って下さったので、またやろうという話は当時からあったんです。

 ですから『真夏の方程式』は、当然、映画原作の第1候補でした。ただ悩んだのは、前回はドラマをファミリー向けにして、映画はテイストの違う大人向けにした。ある種の裏切りで話題性を提供できたけれど、その手は1回限りではないか。今回は、とにかく派手に作るのが、お客さんの求めているものではないかと考えたんです。すると、『真夏の方程式』は深い人間ドラマなので、構想から外れてしまいます。

 それから東日本大震災の影響も大きかったですね。科学技術の発展と自然破壊、あるいは人間の幸せ、というのが大きなテーマですが、震災後の日本にはまり過ぎてしまって、便乗企画に見えてしまうのではないか、という危惧があった。単行本の刊行が2011年6月で、当時は、震災の傷跡がどれほどのものになるか分かりませんでしたから。

 でもさらに数ヶ月議論を重ねて、内容的には何ら問題ない、むしろこういった作品を世に出すべきではないか、ということになりました。

 そして映画化の作業に入るわけですが、まず直面するのが尺の問題です。あの本を忠実に映画化しようとすると10時間かかる(笑)。8割カットして2時間にするのが映画化の作業なので、最低限どこを残さないといけないのか、という発想になります。それから小説のガリレオシリーズは基本的に群像劇で、複数の人の目線で事件全体を描いていくけれど、映像化の際は湯川を中心に置いて話を進めないといけない。そこが大変なんです。この作品では、事件現場の町にいる湯川と、東京で捜査している草薙とが完全に分かれてしまっている。東京の部分は、大胆にカットするしかないわけです。

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真夏の方程式

東野圭吾・著

定価:720円(税込) 発売日:2013年05月10日

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特設サイト東野圭吾 『真夏の方程式』(2011.06.06)