- 2015.04.06
- 書評
大阪の沈滞ムード払拭に都構想は効果なし
デメリットだらけの改革を徹底検証
文:藤井 聡 (京都大学大学院教授)
『大阪都構想が日本を破壊する』 (藤井聡 著)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
本書で筆者が申しあげたかったメッセージは、次の一言に尽きます。
「『大阪都構想』など『論外』である」
多くの人々にとって、筆者のこのメッセージは、意外かもしれません。しかしそう感ずる方々の多くは都構想の具体的中身をあまり知らず、漠たるイメージだけをお持ちではないでしょうか。ところが「都構想の中身」を詳しく知る専門家の多くは、当方と同趣旨の見解をお持ちなのです(例えば、筆者HP『大阪都構想を考える』をご覧ください http://satoshi-fujii.com/)。
なぜ、論外なのか?
設計図である「協定書」の中身をじっくりとみれば明らかな通り、「都構想」とは、「大阪市が廃止され、大阪市民が自治を失うだけの話」だからです。デメリットばかりでメリットなどほとんど見出せないのです。
具体的にお話ししましょう。
都構想の実現によって、大阪市という巨大な自治体が廃止され、代わりにつくられるのは、大阪市を五分割した「特別区」です。しかし、特別区長は大阪市長よりも格段に権限が弱く、特別区役所は大阪市役所よりも権限も財源も劣ることになります。
大阪市が廃止されることで、大阪市民がどれだけの自治体財源を失うのかと言えば、年間約2200億円。
これまでは、自分たちが選んだ市長や市議会議員を通して、この2200億円の使い道を決めてきたのですが、これからはそれが難しくなります。なぜなら、2200億円の使い道を決めるのは、大阪市長・大阪市議会よりも自分たちから「遠い」大阪府知事・大阪府議会になるからです。つまり都構想が実現すれば、大阪市民は自分たちの血税の使い道が今よりも「思い通りにならなくなる」のです。それは、大阪市民の行政サービスの劣化につながる恐れが大いにあります。
ただし、大阪府と大阪市のいわゆる「二重行政」が解消され、行政が効率化し、大阪がより活性化する、ということであれば、「都構想にもメリットがある」と言えます。
ところがそうはなりません。調べれば調べるほど、図書館も体育館も水道も、大阪府と大阪市の事業間の重複はそれほど問題を起こしているわけではなく、「二重行政」を解消しても、さして変わらないという実態が明らかになってきたからです。当初、「4000億円」とも言われていた「二重行政解消による財政効果」も、大阪市の推計で、「年間1億円」程度にまで減額されています。
それどころではありません。
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