レビュー

大阪の沈滞ムード払拭に都構想は効果なし
デメリットだらけの改革を徹底検証

『大阪都構想が日本を破壊する』 (藤井聡 著)

文: 藤井 聡 (京都大学大学院教授)

 むしろ大阪市の分割に伴い、導入時点で600億円、毎年ベースで少なくとも20億円のコストがかかると言われています。つまり、二重行政解消によりコストを節約できるどころか、大阪市の廃止により、余計にコストが発生しそうなのです。

 以上だけでも「都構想は論外だ」とも言えますが、これらはまだ序の口。

 何にもまして「論外」なのは、都構想が実現することで、大阪が「都心」を失い、コアをなくした大阪が「ダメ」になっていくということです。これまでキタやミナミといった大阪都心の都市計画を進めてきたのは、大阪市です。その大阪市から都市計画の権限と財源を奪いとれば、そうなるのも当然です。

 もちろん、論理的には、大阪市の代わりに大阪府が都心の都市計画を進めることも考えられます。しかし、実際には困難です。大阪市民が占めるのは、大阪府人口の3割にすぎません。そのため、大阪府の行政は、大阪市民の意向通りにはなりません。しかも、大阪府は巨額の借金を抱えています。その額は、大阪市の借金の1.4倍。6.4兆円にも達します。財政に余裕のない大阪府に、都心に集中投資をする力はありません。

 都心という核を失った大阪が衰退するとどうなるか。西日本全体がますます衰退し、東京一極集中がさらに加速するでしょう。

 ところで、首都直下地震はいつ起きてもおかしくないと言われています。もしそうした災害が東京を襲ったら、どうなるでしょうか。そんなとき、東京に援助の手を差し伸べ、代わりに日本を支えられるのは、大阪以外にありません。しかし、今以上に、東京一極集中が進み、大阪が衰退すれば、首都が災害に見舞われた時に、日本は二度と立ち上がれないほどの深刻なダメージを受けることになるでしょう。大阪は、日本全体にとってそれほど大事な街なのです。

 大阪市民を対象に「大阪都構想」への賛否を問う住民投票が2015年5月17日に行なわれます。

 確かに今の大阪は元気がありません。「今の大阪ではよくない」と多くの人が感じています。「大阪都構想」も、この沈滞ムードを吹き飛ばすための“改革”として受けとられているようです。

 しかし、住民投票で問われるのは、「都構想についての漠然としたイメージ」ではなく、「都構想の設計図である協定書」への賛否です。

 賛否の判断の前に、まず「都構想の中身」を多くの方に知っていただきたい、という思いから本書を執筆しました。

 賛成派も、反対派も、まず本書を手に取っていただければ幸甚です。

(※本稿の筆者の見解は、筆者がかかわる如何なる組織の見解とも無関係なものです)

大阪都構想が日本を破壊する
藤井聡・著

定価:本体740円+税 発売日:2015年04月06日

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