2013.09.17 書評

ライバルは海外テレビドラマ。
警察捜査小説の醍醐味がここに

文: 池上 冬樹 (文芸評論家)

『代官山コールドケース』 (佐々木譲 著)

 順序が逆になったが、特命捜査対策室ものの第2作『代官山コールドケース』を読んだ後に、前作『地層捜査』を読んで、おお、そうきたかと思った。第2作の狙いがあらためてわかったのだ。安住せず、より複雑なストーリー展開を選んでいる。一言でいうなら、海外テレビドラマを含めた警察ものの最前線を意識している。

 いま日本では警察小説が花盛りであるが、これは日本ばかりではない。世界中で警察小説が書かれ、次々に翻訳され、世界中で警察・刑事ドラマが作られている。とくにアメリカのテレビドラマのレベルは高く、僕なども毎週欠かさずに見ていて、小説の敵はなかなか手強いぞと思ってしまう。

 実際、テレビドラマが多いと小説まで時間が割けない人間が増えてきて、よくきかれるのだ。その小説は、『CSI』よりも面白いのか、『ボディ・オブ・プルーフ』よりも泣かせるのか? と。正直にいうなら越えるものは少ないが、並ぶものはいくつもあるし、映像にはない小説ならではの魅力がある。本書もそのひとつだ。

 物語は、警視庁捜査一課の水戸部裕警部補が呼び出しをうける場面からはじまる。あらたに密命がおりたのだ。

 発端は、3日前に川崎で起きた殺人事件だった。若い女性が扼殺された事件で、女性の膣内の精液をDNA鑑定した結果、17年前(1995年)に代官山で起きた殺人事件のものと一致した。代官山のカフェ女性店員殺人事件では有力な被疑者を特定し、いよいよ逮捕という段階で被疑者は死亡。被疑者死亡のまま送検した。

 だが、DNAが一致したことで、17年前の事件捜査が誤りであり、変死した被疑者は冤罪だった可能性が出てきた。警視庁と犬猿の神奈川県警よりも先に真犯人を見つけ出し、隠密に確保しなければならない。水戸部は子持ちの女性刑事・朝香や科捜研の中島やほかの刑事と力を合わせながら、過去の事件を追及することになる。

 コールドケースとは迷宮入りした事件のことである。2010年に殺人事件の時効制度が廃止されてから、未解決の重大事件の捜査にあたる特命捜査対策室が新設されたのである。

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代官山コールドケース
佐々木譲・著

定価:1943円(税込) 発売日:2013年08月29日

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