2013.09.30 書評

17年前に少女の夢を奪った真犯人を確保せよ

文: 石井 千湖

『代官山コールドケース』 (佐々木譲 著)

ささきじょう/1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。90年『エトロフ発緊急電』で日本推理作家協会賞、山本周五郎賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞を受賞。 文藝春秋 1943円(税込)

 一月の阪神淡路大震災、三月の地下鉄サリン事件、五月のオウム真理教教祖の逮捕。一九九五年といえば、ざわざわした空気のなか、就職活動をしていたことをまず思い出す。大学生だった。震災やオウム関連の報道に釘づけになっていたから、他にどんな事件があったか忘れてしまったが、自分がそのとき何をしていたかということについては妙に細かく憶えている。

『代官山コールドケース』は、日本全体が騒然としていたあの年に埋もれてしまった事件の謎を土地の記憶とともに掘り起こすシリーズの第二弾だ。主人公は管理官に対する暴言がもとで未解決事件を専門に担当する特命捜査対策室に配属された水戸部裕警部補。前作『地層捜査』では地元有力者のゴリ押しにより迷宮入りしていた四谷荒木町老女殺人事件を再捜査したが、今回はさらなるムチャぶりが水戸部を待っている。

 二〇一二年、警視庁が解決ずみにしていた事件に冤罪の可能性が出てくるところから物語は始まる。川崎で発生した強姦殺人事件の被疑者の精液をDNA鑑定した結果、十七年前の代官山女店員殺害事件の現場に残されていた陰毛のものと一致したのだ。そこで水戸部に下された密命は、神奈川県警よりも先に代官山女店員殺害の真犯人を確保せよというもの。しかも警視庁幹部の面目が丸つぶれにならないように、秘密裏に捜査を進め〈偶然による解決〉に見せかけろという。

 水戸部は性犯罪に詳しい朝香千津子とコンビを組んで、被害者の周辺を洗いなおしていく。長野からファッションデザイナーを目指して上京するも、専門学校を中途退学し、家賃三万五千円のアパートで暮らしながら、カフェバーで働いていた二十二歳の中牧みちる。朝香に〈地方出身の女の子の、夢が破れてゆく典型的なパターンですね〉と言われてしまう彼女の切ない生の痕跡が、再開発で失われた代官山の風景と一緒に甦っていく。

 読んでいるうちに東京に出てきてまもなく代官山の「DEPT STORE」に行ったときのことが脳裏をよぎった。当時のファッション誌でよく取り上げられていたセレクトショップ。買えるものはなかったが、見ているだけでも楽しかった。きっと、みちるも行っただろう。数年前に全店閉店したそうだ。おしゃれな街というイメージは二十一世紀になっても変わらないが、店も人も入れ替わっていることを実感する。自分が完全に若者ではなくなってしまったことも。

 人のなかにある、さまざまなタイムカプセルを開くミステリーだ。