2016.01.31 書評

近代的人間観を捨てよ!

『脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克』 (中野剛志・中野信子・適菜収 著)

「ナショナリズムは危険なもの」「知性で殺し合いは回避できる」「人を見た目で判断してはいけない」……これらは近代の迷妄にすぎません。脳科学、社会科学、哲学の若手論客が人間の本質を鋭く突いた白熱の討論。刺激に満ちた視点が交差する本書より序章を紹介、きれいごと一切なし!

人は見た目で判断できる?

『脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克』 (中野剛志・中野信子・適菜収 著)

剛志 いきなり核心を聞きますが、男と女のどちらがバカなのでしょうか?

信子 統計的にみると、男性と女性では脳の構造にも機能にも有意差があります。

 知能の人口分布を調べると、両端(非常に知能が高い人や非常に知能が低い人)に行くほど少なく、中央(普通の知能の人)ほど多い釣鐘状のグラフになるとされています。いわゆる正規分布ですね。

 そこで男女の差を比較すると、女性は中央に多く、男性は釣鐘の裾野が広くなっている。したがってグラフの形から考えると、とても頭のいい人は男性に多いといえます。

 じつは朝日新聞のインタビュー(二〇一五年六月八日付朝刊)で、私も、記者の方から「そもそも男女の脳に違いはあるんでしょうか?」と訊かれたので、正直に答えました。

剛志 それって朝日新聞的にはタブーですね。その記者、慌てふためいたでしょう。

信子 ちょっとびっくりされた様子でしたね。でも、「面白いぞ」という表情が垣間見えたようにも感じました。それで記者が「でも先生、その理論が正しいとすると、とっても頭の悪い人も男性に多いですよね」って言うから「その通りです」と答えた。記事ではフォローしてくださったんですね。まあ、私は身も蓋もないことを言っちゃったわけだけど、朝日はちゃんとその部分も削らずに残してくださった。

剛志 その点は朝日も立派ですね。

適菜 科学の優れた点はフェアであることです。実証的なデータを示せば、社会通念上、言いづらいことも言うことができる。

 たとえば「人間を顔で判断してはいけない」とよく言われます。「顔は生まれつきのものだからケチをつけるのはおかしい」と。

 でも実際には、顔は情報のかたまりであり、外見で判断できる部分はかなり多い。そして実際に世の中は、そうした判断により回っている。ただ、はっきりそう言ってしまうと世間から叱られる。

 実はこれは近代イデオロギーが生み出しているタブーなのですが、科学的データがあれば、案外すんなり受け入れられる。

信子 そう、「私が言ってるんじゃなく、実験データが言ってるんだから」って開き直れる。それがサイエンスの魅力でもあると思います。

 ただ、注意しなければならないこともあります。一九九四年に米国で『ベルカーブ』(ハーンスタイン&マレイ、邦訳未出版)という本が出版されて話題になりました。どうして話題になったのかというと、「知能分布の形状が人種によって異なる」という趣旨の記述を、多くの人が問題視したからなんです。要するに、黒人の知能が低いのは生まれつきだ、と主張する人種差別本であるかのように受け止められた。丁寧に読めば、そうでないことはすぐにわかるのですが……。

 どこの国でも、曲解してでも発言上のアラを作り出し、誰かを叩こう、という欲求に常に駆られている人は存在するものなのかもしれません。この“アラ”というのは、不自然な平等主義な視点からの“アラ”ですね。

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脳・戦争・ナショナリズム 近代的人間観の超克
中野剛志・中野信子・適菜収・著

定価:本体770円+税 発売日:2016年01月20日

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