アナザーフェイス×警視庁追跡捜査係
堂場瞬一のふたつのシリーズの最新作が同時刊行される。
アナザー・フェイスシリーズ『凍る炎』(文春文庫)と、
警視庁追跡捜査係シリーズ『刑事の絆』(ハルキ文庫)。
2冊同時刊行というだけでなく、ふたつのシリーズが連携し、
ひとつのストーリーをなす、シリーズ横断の巨編小説なのだ。
出版社が発案したものではなく、堂場瞬一という作り手が企画し、
社の垣根を超えて実現させた出版界の常識を打ち破る、
前代未聞の一大プロジェクトだ。
果たして堂場瞬一とは、どのような小説家なのか?
彼の仕事場を訪ね、その創作の源泉に迫った。
原稿用紙にして一日50枚──。
堂場瞬一にとってそれは、「書かねばならないノルマ」
ではなく、「それ以上は書かない」という制限枚数
なのだという。
「ペースをあげて一日70枚、80枚書くのも不可能じゃない。50枚というのは、クオリティを維持することのできる、現時点で最も適切なペースなのです」
仕事場には、毎朝8時30分に「出勤」。18時の「定時」には帰宅して、「残業」はしないことにしているが、警視庁追跡捜査係シリーズの主役のひとり、西川大和のように書きかけの仕事を持ち帰り、深夜12時まで格闘することもあるという。
このような執筆形態は1年前、新聞社を退職し、専業作家になった日から続けている。「土日」の休日も、夏と冬の長期休暇もない。
「もし、雇われの身だとしたら、雇用者は間違いなくブラック企業でしょう(笑)。それでも文句も言わずにこの生活を続けているのは、僕にとって執筆は仕事ではなく、娯楽のようなものだからです。書き始める前は、詳細な設計図とは言えないまでも、ある程度の出来事を結末まで構想したプロットを作ります。短くて3日、長くて半年、ああでもない、こうでもないと試行錯誤するモヤモヤした作業ですが、それさえ楽しい。最後の一行を書いたときの達成感はもちろんのこと、僕の場合、最初の一行に手をつけて、漠然としたアイディアが形になる瞬間のわくわく感のほうが喜びが大きいです。娯楽だからこそ、手を抜かずに全力を尽くすことができる。スランプもありません」
「小説の舞台にする場所には、必ず足を運んでその地の空気を吸ってきます。先日、プロットに『那須』と書いたものだから、クルマを飛ばして半日過ごしてきました」