2009.06.20 インタビュー・対談

警察小説と「プライベート・アイ」

聞き手: 「本の話」編集部

『廃墟に乞う』 (佐々木譲 著)

警察小説と「プライベート・アイ」

──佐々木譲さんの新作『廃墟に乞う』は、この秋映画が公開されます『笑う警官』などと同じく、北海道警察の刑事が主人公です。しかし、他の作品と大きく異なるのは、主人公である道警本部刑事部捜査一課の仙道孝司は、「休職中」という特殊な立場であることです。なぜ、「休職中」としたのか、その理由を教えてください。

佐々木  小説の依頼を頂いたとき、北海道という舞台をうまく使えれば、過去の作品とは角度の違う警察小説が書けると思ったんです。北海道の場合、広大な面積ですから、各方面によって担当が分かれています。つまり、道警本部に在籍していても、北海道全域の捜査に関わることはできないんです。そうすると、書ける地域が限られてしまう。これを打開するような設定はないかと悩んでいたんですが、ある日「休職中」にすれば、そのような組織の縛りなしに、動き回れることに気がついたのです。

   矢作俊彦さんの小説に、「二村永爾シリーズ」というものがあります。二村刑事の場合、非番の日に捜査をします。このシリーズは、警察官の話ではありますが、一方で、「プライベート・アイ(私立探偵)」小説としても、とても面白く読めます。ならば、私は「休職中」という立場にして、「プライベート・アイ」小説に挑んでみようと思いました。「休職中」ですから、私立探偵同様、拳銃も警察手帳も持つことができません。捜査権も逮捕権もないけど、警察官ですから、人脈はあります。仙道には自分の刑事の経験と、その人脈をフルにつかって、北海道のさまざまな街に登場してもらおうと思いました。

──休職中という立場は、書く上でも大きな制約を与えますね。どの点にご苦労なさいましたか。

佐々木  どこまで事件の解決に寄与できるか、ということですね。何しろ、捜査権がないんですから。試行錯誤しながら書き進める中で、この主人公にできることは、初動捜査の段階で、捜査の方向がずれていることを示唆する、あるいは、新しい方向を教える、そのくらいのことだと気付きました。事件が起こった直後、現場が混乱しているときに、別の視点からほんの少しヒントを出して、初動の混乱が終わり、みなが冷静になったあたりで、去っていく。この設定、悪くなかったな、と思っています。

廃墟に乞う
佐々木 譲・著

定価:1680円(税込) 発売日:2009年07月16日

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