「まほろ」人物紹介・キーワード図鑑

多田啓介(ただけいすけ)
まほろ駅前で便利屋「多田便利軒」を営む。子供を亡くした過去があるバツイチ。行天とは高校時代の同級生だったが、友だちではなかった。仕事で知り合った柏木亜沙子に淡い恋心を抱く。
行天春彦(ぎょうてんはるひこ)
三年前に多田便利軒に転がりこんだ居候。高校時代に小指を切断する事故に遭うが、早い処置のため無事(?)回復。バツイチ。会社員時代に内科医だった三峯凪子と偽装結婚をした。
ルル
自称コロンビア人の娼婦。チワワの「ハナ」を飼っている
ハイシー
娼婦。ルルのルームメイト。
星良一(ほしりょういち)
まほろ市の裏社会で生きる若きボス。ヤクザではなく「多少スネに傷を持つ一般市民」を自称。多田に厄介で困難な依頼を押しつけてくる。
曽根田(そねだ)のばあちゃん
まほろ市民病院に入院中の老婆。息子が時々、多田に見舞いを依頼。多田の将来を予言することもある。若かりしころは“まほろばキネマ”の看板娘だった。
田村由良(たむらゆら)
小学六年生。星良一が絡んだトラブルを多田に解決してもらった過去がある。多田と行天は「由良公」と呼ぶ。
岡(おか)老人
多田便利軒の常連客。悠々自適の生活だが、横浜中央交通(ヨコチュー)のバスの間引き運転を疑い、時折多田に運行監視の仕事を依頼する。
柏木亜沙子(かしわぎあさこ)
洋食レストラン「キッチンまほろ」の女主人。過去に夫の遺品整理の仕事を多田に依頼。大きな家に一人で住む。
三峯凪子(みつみねなぎこ)
行天の元妻。内科医をしていた時に行天と偽装結婚、人工授精ののち「はる」を出産する。行天のことは「春ちゃん」と呼ぶ。
三峯はる
行天と凪子のあいだの遺伝子上の娘。ウサギのぬいぐるみ「クマクマ」を大事にしている。

イラスト:下村富美

KEYWORD

東京の区部から遊びにきた友人は、まほろ市に都知事選のポスターが貼ってあるのを見て、「まほろって東京だったのか!」と驚く。(「多田便利軒」より)
東京と神奈川の周縁部に住むヤンキーたちは、「東京に遊びに行くべ」と言って、16号を盗んだバイクで疾走し、あるいは、八王子線や箱根急行略してハコキューに大挙して乗りこみ、一路まほろを目指す。(「多田便利軒」より)
「去年から気になっていたんだが、どうも間引き運転をしているとしか思えん。俺も含め、このあたりの年寄りにとって、バスは重要な交通機関だ。病院に行くにも、駅に出るにもな」
 岡は真剣な口ぶりである。岡の家のまえを通るバスは、山城団地とまほろ駅のあいだを、まほろ市民病院を経由して結ぶ路線だ。(「多田便利軒」より)
多田の仕事の現場には、爆弾(傍点)がたくさん埋められている。巧妙に隠されている場合もあれば、見つけてほしいと言わんばかりの場合もある。
 それらすべてを、いちいち踏んで爆発させていたのでは、こっちの身が保(も)たない。(「狂騒曲」より)
多田が「アポロン」を選んだのは、ここの店員ならば話に聞き耳を立てたりせず、しかし火急の際にはすっ飛んできて、荒れ狂う行天を羽交い締めにしてくれるのではないか、という期待があったからだ。店じゅうに観葉植物の鉢が置かれているので、繁茂した葉によって、ほかの客の目を適度にさえぎることができるのもいい。(「狂騒曲」より)
白く細い煙がふた筋、空へ昇って雲に溶けゆく。
「メンソールって、インポになるって言うよな」
「あれは迷信らしいよ。まあ、俺はもともと性欲薄いから、よくわかんないけど」
(「狂騒曲」より)
まほろ市
東京の南西部に、神奈川へ突き出すような形で存在する都市。人口三十万人を擁する一大ベッドタウンだが、位置的なことから神奈川県の一部と誤解されることも多い。
ハコキュー
まほろ市を縦断して都心部へのびる「私鉄箱根急行線」の通称。「ハコキューまほろ駅」から新宿までは三十分。まほろ市民からは国道16号とともに「ヤンキー輸送路」と呼ばれる。
横中(ヨコチュー)
「横浜中央交通」の略称。横中バス路線はまほろ市内にクモの巣のように張りめぐらされて駅前から郊外、および住宅地を結ぶ。バスはオレンジ色の車体が特徴で、まほろ市民にとっての馴染みの足。山城町の岡老人はなぜか間引き運転を疑う。
地雷をなるべく避ける
顧客の事情に首をつっこまないという、多田の便利屋としてのたしなみ。遵守できるときもあれば、できない場合も。
コーヒーの神殿アポロン
まほろ大通りの雑居ビルの二階に古くからある喫茶店。フロア中央に巨大な甲冑(かっちゅう)、そこここに裸婦の彫刻などが置かれるなど、独特の内装が特徴。意外にもたくさんの固定客が存在し、多田や行天も利用。
ラッキーストライクとマルボロメンソール
多田と行天が愛煙する煙草。多田はラッキーストライク、行天はマルボロメンソールを吸う。時に行天がラッキーストライク(おもに多田からのもらい煙草)を吸うことも。「まほろ駅前」シリーズ単行本カバーにも重要なアイテムとして登場。