2016.02.01 書評

あの戦争に負けたのは…昔からまともなエネルギー政策がない日本

文: 岩瀬 昇 (エネルギーアナリスト)

『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 (岩瀬昇 著)

『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 (岩瀬昇 著)

 ひょんなきっかけから、サラリーマン人生の「卒業論文」として『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』を2014(平成26)年9月に出版させていただいた。一人でも多くの皆さんに、エネルギー問題を正しく理解していただき、日本のエネルギー政策について考えてもらいたい、そのためのお手伝いをしたい、というのが書き始めた時の率直な思いだった。延べ21年間にわたる海外勤務を含め、43年間一貫してエネルギー業務に携わってきた商社マン卒業生として、特に大学生や若いビジネスマンに「教科書」として読んでもらいたいと思い、書いた一冊である。

 

 この本の「はじめに」の中で「我ら日本人全般の、いわゆるエネルギーリテラシーが低いのはなぜだろうか? 思えば、石油供給を断たれたがゆえに追い込まれて開戦に踏み切った太平洋戦争、トイレットペーパー狂想曲に踊らされたオイルショック、そして今なお爪痕が生々しい東日本大震災と、多くのエネルギー危機を経験しているはずなのに、なぜ我々はエネルギーに関する基礎的知識・識見に欠けているのだろうか」と書いた。出版後、出演したBS日テレの新書紹介番組「久米書店」の店主・久米宏さんは「日本には停電がないからだ」とおっしゃっておられた。それも一つの理由だろう。人は本当に困らなければ、問題を真剣に考えようとはしないものだからだ。では、1941年夏から秋にかけてあの戦争を始めようと決めた「あの時」は真剣に困っていなかったのだろうか。

 1948(昭和23)年に生まれ、1971(昭和46)年に社会人になった筆者は、オイルショックも東日本大震災も「わがこと」として体験している。だが、太平洋戦争については歴史として学んだだけだった。太平洋戦争をめぐる石油の事情はどうだったのだろうか。もっと知りたい、と思った。これが第二作になる本書を書くために勉強しようと思い立った動機である。

 

 前著を書き始めたのは2013(平成25)年の秋、まだ三井石油開発株式会社の顧問を務めていた頃だ。サラリーマン生活も残り1年弱となっていたが、退職後の生活設計はまったく描けていなかった。自分は何をしたいのだろうか。生活のための仕事はせず年金で慎ましく暮らすこととして、あり余る時間をどう使おうか。

 学生時代に「売れない作家」になりたかった筆者は、何はともあれ、本を読むことと文章を書くことが好きだった。家庭を持ってからは家族新聞を作ったり、家族向け生活ブログを書いたりもしていた。海外勤務が長かったため、子供たちや親類と離れて暮らすことが多かったこともあるが、これらを書くことは楽しみだった。社内でも報告書などを書き上げるのは速いほうだった。

 そんな筆者の退職後の生活には、図書館通いが相応しいだろうと考えて、都内の主要公立図書館の下見を開始していた。どこかにベースが欲しい。

 ある時、ワイフから「東大の駒場図書館にしたら?」と提案された。そうか、駒場なら自宅から歩いて40分ほどだから健康にもいいし、卒業生だから使えるだろう。調べてみると、卒業証明書などを用意する必要はあるが、使えることが判明した。さっそく手続きをして、図書館入館証を入手した。

 これで用意は万全だ。

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日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか
岩瀬昇・著

定価:本体820円+税 発売日:2016年01月20日

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