本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
お餅――家庭料理の名著がつたえること【第3回】

お餅――家庭料理の名著がつたえること【第3回】

『新版 娘につたえる私の味 一月~五月』 (辰巳浜子・辰巳芳子 著)


ジャンル : #趣味・実用

料理研究家の草分けである辰巳浜子さんが著し、昭和の家庭で読み継がれてきた料理書に、娘である辰巳芳子さんが注釈をつけた新版の新書判が登場しました。お正月の中心的な食材であるお餅の扱い方を、あらためて学びませんか。

あべ川餅

『新版 娘につたえる私の味 一月~五月』 (辰巳浜子・辰巳芳子 著)

香ばしいきな粉のあべ川餅は、海苔を巻いた磯巻とならんで、両大関と申せましょう。

あべ川餅はきな粉を吟味しなければなりません。国産の大豆、更においしいのは黒豆のきな粉です。地方の方達は純粋のきな粉を召し上がれるのでしょうが、都会の者は買うより他に手がないので、いつもきな粉えらびに苦労します。ビニールにきっちり包まれたきな粉を開けてなめるわけにもまいらず、ビニールごしに色、香り、肌目をためつ、すがめつする位が関の山です。上等のきな粉が手に入り、甘味に和三盆を使えれば、天にも昇るようなあべ川餅になりますが、それはさておき、白砂糖で結構です。

 

熱湯をさめないように工夫して、その中に焼きたてのお餅をくぐらせ、砂糖入りのきな粉にまぶします。お餅を湯につけ過ぎてべとべとにしてはいけません。お湯がにごったり、冷めたりしたら、新しいものに取りかえましょう。

小まめに熱湯を取りかえることが、あべ川餅をおいしく作るこつです。

*きな粉の原料には黒豆と青豆もある。砂糖の他に少々塩を用いねば、美味にはならない。私は料理に用いる砂糖はすべて喜界島産の赤ざらめとしている。ぜひ国産きな粉を入手してほしい(本書二三七~八頁参照)。(辰巳芳子)

イラスト◎前田典子

辰巳浜子(たつみはまこ)

料理研究家。1904(明治37)年、東京生まれ。香蘭女学校卒業。著書に『手しおにかけた私の料理』(婦人之友社)、『料理歳時記』(中公文庫)などがある。1977(昭和52)年逝去。享年73。


辰巳芳子(たつみよしこ)

料理研究家。1924年(大正13)年、東京生まれ。聖心女子学院卒業。父の介護を通じてスープ作りに開眼。鎌倉の自宅で「スープの会」を主宰する。主な著書に『あなたのために』(文化出版局)、『辰巳芳子 スープの手ほどき 和の部』『同 洋の部』(ともに文春新書)、『食といのち』(文藝春秋、文春文庫)など。

 

新版 娘につたえる私の味 一月~五月
辰巳浜子、辰巳芳子・著

定価:本体1,000円+税 発売日:2015年10月20日

詳しい内容はこちら

新版 娘につたえる私の味 六月~十二月
辰巳浜子、辰巳芳子・著

定価:本体1,000円+税 発売日:2015年11月20日

詳しい内容はこちら

プレゼント
  • 『もう明日が待っている』鈴木おさむ・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/3/29~2024/4/5
    賞品 『もう明日が待っている』鈴木おさむ・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る