知念実希人・著『レフトハンド・ブラザーフッド』

作品紹介

左手に宿る“兄”と俺。奇妙な2人の逃避行が始まる――

高校生の岳士は、バイクに同乗していた双子の兄・海斗を事故で亡くして以来、左手から兄の声が聞こえるようになる。

どんな形であろうと兄の復活を喜んだ岳士は、事故の後遺症による妄想だと決め付ける医師や両親に反発、治療から逃げるために家出する。だが、その胸中には喜びだけでなく贖罪の気持ちも入り混じっているのだった。 ボクシングで鍛えた体力を活かし、自転車での強行軍で多摩川を越えて東京を目指すが、野宿した川原で他殺体を発見してしまう。つい触ってしまった血塗れの右手をホームレスに目撃された岳士は、海斗の声に促されるままに逃げ出す。殺人の容疑者としての逃避行が始まった――。

左手からアドバイスを送る海斗と協力しながら、真犯人につながる手がかりを探る岳士。“兄弟”はやがて「サファイヤ」と呼ばれる謎のドラックの存在に行き当たる。蒼く煌く液体を少量飲み干すだけで「嫌なことをすべて忘れられる」というサファイヤのことを二人に教えたのは、謎の美女・彩夏だった。どこか危うげな彼女に惹かれていく岳士と、怪しいと警戒する海斗は次第に反発するように。

岳士を蝕んでいくサファイヤ、裏社会を仕切る集団、スパイを持ちかける刑事……次々と襲うピンチを乗り越え、“兄弟”は真犯人にたどり着くことができるのか?

そして、左手に宿る海斗の本当の目的とは?
 

「どんでん返し」なんて言葉では足りない、一気読み必至のノンストップ・サスペンス。

予想不可能のラスト、切ない衝撃に涙があふれる。

エイリアンハンド症候群とは

片腕が自分の意思とは関係なく動いてしまう実在の症状。
脳障害や精神疾患が引き金となるとされている。腕の行動は多様で、物を掴む、字を書く、時には自分の顔を殴ることまであるという。その姿が、まるで何者かに片腕を乗っ取られたように見えることから「エイリアンハンドシンドローム」または「他人の手症候群」と呼ばれる。

著者紹介

知念実希人

1978年、沖縄県生まれ。2011年、『誰がための刃レゾンデートル』で第四回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞、翌年同作で作家デビュー。現役医師としての経験に裏打ちされた医療描写に定評がある。著書に「天久鷹央の推理カルテ」シリーズ、『優しい死神の飼い方』『黒猫の小セレナーデ夜曲』『仮面病棟』『時限病棟』『あなたのための誘拐』『屋上のテロリスト』『崩れる脳を抱きしめて』『祈りのカルテ』『リアルフェイス』『ひとつむぎの手』など。