妻の帰りを待つ父子、周囲の森のから異様な音が、奇妙なものたちが彼らを訪れる。新しい文学の冒険、不思議な味わいの連作集。
異国の森のはずれに、幼い息子と住む「ぼく」。妻は第二子を出産するため実家へと旅立った。やがて森から不思議な物音が響き、次々に異形の者が現われる。妻は帰ってこない……。在るべきものの不在、あり得べからざるものの出現、行くべき場所はなく、帰る家もない者の不安と焦燥、ささやかな慰藉。連作形式で描出される「奇妙な時間と空間の裂け目の中に生きる」父子は、私たちとどこか似てはいないか。中上健次の継承者と評された三島由紀夫賞受賞の気鋭作家、渾身の意欲作です。(OM)
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