播州のとある町で、日曜学校を主宰する敬虔なキリスト教徒で公立学校教師の父。子供たちを育て、しっかりと家を支える母。主人公は、青雲の志をいだいて、フルブライト留学生としてイエール大学に学ぶ哲学徒。まだ、だれもが無名で若く、「なにものかにならん」と情熱を静かに燃やしていた日々。大学教師となって、すぎゆく学究、教育の年月・・・やがて響くノーサイドの笛。脳裏を行き交うのは、ガキ大将との決闘、日曜学校、ちりぢりとなった小学校の同級生たち、そして、海の見える老人ホームに暮らす母の晩年・・・・。品格ある筆致で回顧する試行の軌跡。――芳醇な青春記。