作品紹介

明治27年に最後の商いに出た北前船の「正得丸」の航海と、その乗組員たちのその後の人生を描いた小説です。江戸時代の物資の流通を支えた北前船は、明治という時代の到来とともに衰退に向かいます。帆船では、輸送力や安定性で蒸気船や鉄道に太刀打ちできなくなったからです。そうした北前船のひとつ、石川県安宅湊を本拠とする「正得丸」は、明治27年、これが最後と覚悟して大阪港を出、瀬戸内海、下関を抜けて日本海を北上、いろいろな湊で商売をしながら、北海道の小樽湊まで足を伸ばします。この小説の読みどころはふたつ。ひとつは、北前船の航海とはどういうものであったのかを、丹念な取材をもとに再現している点です。商売の仕方や航法、乗組員の仕事の分担、日常の生活ぶりなどとともに、船中での風習、待ち受ける危険にまで筆が及び、知られざる北前船の実像に迫ります。また、最後の航海を終え陸に上がった水夫たちは、ある者は鎌倉彫の職人になり、ある者は捕鯨会社に勤め、ある者はフランス料理のシェフになる、といったふうに、それぞれが新しい人生を歩み始めます。そしてその生き方は、古いものにしがみつくのではなく、かといって、いたずらに新しいものに飛びつくのでもない、いかにも明治の人間らしい、地に足のついたものでした。そうしたそれぞれの生き方が、本書のもうひとつの読みどころです。明治という激動の時代に、市井の人々はこんなにもしっかりと自分たちの人生を切り開いていったのだ、という著者からの熱いメッセージです。本書のテーマは、北前船を舞台に借りた、明治人のひたむきな生き方にあるともいえるでしょう。

担当編集者より
明治27年に最後の商いに出た北前船・正得丸の航海と、乗組員たちのその後の人生を描いた小説です。読みどころは、北前船は帆船としてどんな航海をしていたのか、商売の仕方から航法、船中生活に至るまで丹念な取材を元に再現している点です。そして船を下りた水夫たちは、鎌倉彫の職人や会社員、シェフなど新しい人生を歩み始めます。それは古いものに固執するのでも、むやみに新しいものに飛びつくのでもない、地に足のついたものでした。そうした明治人の生き方が本書のもうひとつの読みどころと言えるでしょう。
目次
プロローグ
第1章 明治二七年
正得丸図絵馬
「表」
「絵馬藤」
出帆
日本海
石工の勤蔵
安宅
算術の充嘉
能登
辰三郎難破回顧
帆待
「炊」の豊治
「ヤマセ」と「マギリ」
鰺ヶ澤
辰三郎帰還
船絵馬奉納
辰三郎下船
松前へ
「真昆布」
「魚肥」
「近くの他人」
権次郎決断
直一述懐
「×(かけじるし)会」
第二章 終航以後
鎌倉彫
塩飽の末子相続
絵葉書
保太郎入営
近海捕鯨
工手学校
巴里万国博覧会
×会とマリアンヌ
羊蹄山とレルヒ中佐
夢現
辰三郎晩年
エピローグ
商品情報
書名(カナ) アタカショウトクマルノカコタチ
ページ数 312ページ
判型・造本・装丁 四六判 上製カバー装
初版奥付日 2018年08月30日
ISBN 978-4-16-008932-7
Cコード 0093

著者

宮藤 等

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