単行本 企画出版

「張作霖を殺した男」の実像

1,650 (税込)
発売日2019年08月30日
ジャンルノンフィクション
商品情報
書名(カナ) チョウサクリンヲコロシタオトコノジツゾウ
ページ数 536ページ
判型・造本・装丁 四六判 上製 上製カバー装
初版奥付日 2019年08月30日
ISBN 978-4-16-008955-6
Cコード 0021

関東軍河本大佐はなぜ爆殺を敢行したのか?

昭和3(1928)年6月4日未明、中国軍閥の雄であり満洲の支配者であった張作霖を乗せた列車が奉天郊外で爆破され、張作霖は死亡します。爆薬をしかけたのは関東軍、首謀者はその高級参謀・河本(こうもと)大作大佐でした。事件直後から関東軍の関与が疑われましたが、時の日本政府は中国での反日の動き、海外諸国からの非難を恐れ、事件をうやむやのうちに処理します。この真相不明の「満洲某重大事件」は戦後、東京裁判での田中隆吉元陸軍少将の証言がきっかけで世に知れ渡ります。それとともに河本大作は、関東軍の「悪行」の代名詞となります。いわく、「幕末の志士気取りで独断で蛮行に及んだ」「河本は事件をきっかけに軍を出動させ満洲を制圧しようとした」「軍法会議にかけられるのを恐れ、そうなったら軍の謀略を全部暴露する、と言って軍の幹部たちを脅迫した」「満洲事変、ひいては日中戦争に至る導火線に火をつけた男だ」と。
しかし著者は、河本に貼られたこの「大悪人」のレッテルに疑問を呈します。著者は河本大作の孫娘。家族のもとには、事件直後、陸軍中枢の幹部たちが謹慎中の大作に送った激励・慰労の書簡のほか、大作が家族や知人らに送った手紙、大作の活動の記録など、多くの秘蔵資料が残されていました。それらが伝える大作の生き方、著者が幼い頃に接した祖父の姿は、世間の人たちが持つイメージとは大きくかけ離れたものでした。著者は家伝の秘蔵資料をじっくり読み込み、研究書・論文等を博捜し、祖父がなぜ張爆殺を敢行したのか探ります。そして、祖父・大作は誤解されている、という結論に達します。著者は本書で秘蔵資料を開示し、大作が張爆殺を企図するに至った経緯を、当時の満洲の状況を交えつつ解説し、それが決して「独断」でも「満洲制圧を目指したもの」でも「軍の幹部たちを脅迫したもの」でもないことを明らかにします。これまでの常識を覆す、大作復権の画期的な論考です

目次

はじめに
第1部 爆殺事件まで
第1章 大作の育った時代
1 生い立ち
2 日清戦争と三国干渉
3 松陰の教え
4 富国強兵・殖産興業・領土保全
第2章 日露戦争
1 出征
2 日露講和条約
3 間島事件
4 結婚
第3章 第一次世界大戦
1 孫文と辛亥革命
2 日本参戦
3 対華二十一カ条
第4章 漢口守備隊
1 シナ大陸こそ働き場所
2 辺境勤務
第5章 シベリア出兵
1 ロシア革命
2 パリ講和会議とヤング・チャイナ
3 尼港事件
第6章 関東大震災前後
1 北京公使館付武官
2 参謀本部第二部支那班長
3 大震災起こる
4 小倉第十四連隊長
第7章 満洲とは何か
1 満洲とは誰のもの?
2 張作霖と満洲
3 関東軍と大作
4 東方会議
第8章 大作の書いた極秘書簡二通
1 磯谷廉介中佐宛
2 荒木・松井両参謀本部部長宛
第9章 爆殺直前の経緯
1 日本政府からの警告
2 北京を出発する張作霖
3 特別列車の同定・識別
第10章 事件についての報道・証言
1 新聞報道と関東軍報告書
2 林久治郎総領事の証言
3 満鉄地方課長平島敏夫の回想
4 衆議院議員松村謙三の日記
第11章 事件後の動き
1 軍閥軍、蒸発す
2 事件関連の民間人
3 林総領事の事件報告
4 大作の告白と査問会
5 特別調査委員会
6 重大事件をめぐる「秘かな」論争
7 重大事件をめぐる報道
8 昭和天皇への上奏
9 停職処分
第12章 十将軍からの手紙
1 小磯国昭書簡
2 村岡長太郎書簡
3 本庄繁書簡
4 建川美次書簡
5 奈良武次書簡
6 武藤信義書簡
7 南次郎書簡
8 真崎甚三郎書簡
9 荒木貞夫書簡
10 本郷房太郎書簡
11 永田鉄山と大川周明の往復書簡
第2部 事件以後
第13章 日本人にとっての満洲
1 張学良の登場
2 「満洲作り男」
3 溥儀からの密使
4 満洲事変
5 満洲国の変貌
第14章 浪人生活からの再出発
1 陸軍有志による慰労の宴
2 霧社事件
3 二つの裏仕事
4 川島芳子
5 瀋海鉄路幹事長
第15章 満鉄理事の時代
1 理事就任
2 満鉄改組案
3 杉原千畝への支援工作
4 満洲産業開発五カ年計画
5 満洲の植民地化
6 理事退任
第16章 満炭理事長の時代
1 資金調達に奔走する
2 二つの寄稿
3 嶺大叔父との対話
4 辞任の挨拶
5 退任の舞台裏
第17章 二度目の浪人
1 中国と戦争をしてはならぬ
2 久し振りの家族団欒
3 怒りと心痛
第18章 山西産業
1 閻錫山
2 太原に行く大義
3 虎の掛け軸
4 社長就任
第19章 家族に宛てた手紙
1 妻へのラブレター再掲
2 一九四一年から四八年にかけての手紙
第20章 山西残留
1 晋陽学園
2 太原陥落
3 太原版・大作供述書
4 石原武とめぐり合う
第21章 大作の供述書
第22章 大作の死
1 赤革のシューバ
2 葬儀
第23章 陸軍悪玉論
第24章 真実を知りたい
1 張作霖爆殺は大作が独断で行なった――果たしてそうなのか?
2 張作霖爆殺は満洲制圧を目論んだものだった――果たしてそうなのか?
3 大作は軍法会議にかけたら軍の秘密を暴露すると脅迫した――果たしてそうなのか?
4 日本を敗戦に導いた大陸侵略の導火線は大作であった――果たしてそうなのか?
第25章 ささやかなる和解三題
1 張作霖の子孫
2 儀我少佐の子息
3 田中義一の孫
第26章 人は生まれた時代に育てられる
1 前代未聞の困難な時代
2 なぜ英雄なの
3 「ハロー・ディア・エネミー!」
おわりに
資料編
大作の報告書「軍事上より観察せる北満東部沿線地帯」(一九二七年十一月)
将軍たちからの手紙の原文

担当編集者より

戦前は「満洲某重大事件」と呼ばれ闇に葬られた張作霖爆殺事件。その首謀者は関東軍高級参謀・河本大作大佐であると世に知れたのは、戦後の東京裁判からでした。以来、河本は「独断で蛮行に及び日中戦争の導火線に火をつけた男」と指弾され続けてきました。しかし河本の孫娘である著者は、陸軍首脳部から大作に宛てた手紙など封印されていた秘蔵資料を基に、そうした「常識」を覆します。本書は、張爆殺を企図した経緯を当時の満洲の状況を交えて解説し河本大悪人説は虚構であることを明らかにした、大作復権の画期的な論考です。

著者

桑田 冨三子

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