書名(カナ) | ツブラヤコウキチヲスクッタトレーニング トウキョウゴリンヒワトワガリクジョウキョウギジンセイ |
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ページ数 | 196ページ |
判型・造本・装丁 | 四六判 並製カバー装 |
初版奥付日 | 2021年02月28日 |
ISBN | 978-4-16-008990-7 |
Cコード | 0075 |
多くの方がご存じのように、円谷幸吉は1964年東京五輪のマラソンの銅メダリストです。当時テレビでレースを観戦した人なら、陸上競技場に入ってからの最後の一周で、英国のヒートリー選手に抜かれ、3位に終わった口惜しさを記憶しているでしょうし、次のメキシコ五輪を目前にした68年1月、謎の自死をとげたことも、世に大きな衝撃を与えました。その際に残した、家族や知人に宛てた心に沁みる遺書は、今なおその朴訥で誠実な人柄を偲ばせます。
円谷選手は、東京五輪の直前に彗星のごとく出現したマラソンランナーでしたが、実はその出現の陰には“隠密”コーチによる“秘密のトレーニング”がありました。著者・澤田幸作氏による「アグリカルチャー・トレーニング」です。当時、著者は自衛隊体育学校の教官でしたが、表立って円谷選手を指導する立場にはありませんでした。著者自身、仕事柄、情報管理を徹底して教育されていたため、円谷選手との関係や彼への指導内容を“秘密事項”と考え、意識して秘匿してきました。しかし、関係者の多くが物故し、自らも90歳を超えたことを考慮し、日本陸上競技界への“贈る言葉”として、この間のいきさつを書き残す決心をしたのです。
「アグリカルチャー・トレーニング」とは、著者が自力で作り上げた農業から学ぶ訓練法です。農家出身で子供の頃から農作業に従事した著者は、人間の身体能力が自然の摂理に合致したトレーニングをすれば伸びることに気づき、農産物の肥育過程から多くの技法を編み出しました。中でも円谷選手に効果的だったのは、朝食前にスピードを抑えて1時間走る「早朝トレーニング」でした。実はこの「早朝トレーニング」は、円谷選手の実践以後、日本の陸上界に広がり、その後のメダリストたちの輩出に貢献しています。自らそのトレーニングを実践し、90歳を超えた今もマスターズ陸上に出場している著者が、本書においてその極意を開陳します。
まえがき
参考知識
第一章 円谷幸吉とのトレーニング
一 円谷幸吉との出会い
(一)村社先生からの手紙
(二)合宿での円谷との顔合わせ
(三)神懸った予感
(四)畠野洋夫氏との出会い
二 円谷選手へのマラソン育成指導
(一)はじまり
(二)マラソン塾の開講
(三)マッサージしながらの講義とコミュニケーション
(四)秘密のトレーニング――早朝・有酸素運動
(五)東京オリンピックへの動機づけと約束
(六)短距離走力の重要性
(七)休むことの重要性
(八)アメとムチ
三 円谷を支えた環境
(一)実らなかった村社先生への円谷預け
(二)円谷の向学心に火を灯された釜本先生
四 東京オリンピックに向けての三つの危機
(一)第一の危機
(二)第二の危機
(三)第三の危機
五 代表選考レースから東京オリンピックへ
(一)異なる方針
(二)代表選考レースとその後
(三)円谷への表裏のサポート態勢
(四)東京オリンピックへ
(五)二人の関係
(六)織田氏の回顧録――円谷のトレーニングを紹介
(七)東京オリンピック――マラソン当日
六 東京オリンピック後
(一)受賞の喜び
(二)足の腫れもの
(三)円谷の進路
(四)再指導の懇請・固辞
(五)別れ
七 円谷と私
(一)村社先生との約束の成就
(二)「忍耐」の書
第二章 東京五輪のマラソンを支えたトレーニング法
一 トレーニング法の開発の原点
(一)予科練での気づき――「朝トレーニング」の始まり
(二)農業での気づき――「肥培管理」
(三)アグリカルチャー(百姓式)・トレーニングの発見
(四)アグリカルチャー・トレーニングの成果――有酸素運動
(五) 高地トレーニングの効果とその他の出来事
二 トレーニング考――澤田式トレーニング
(一)朝トレーニングでの有酸素運動
(二)筋肉トレーニング
(三)インターバル・トレーニングとの組み合わせ
(四)リラクゼーションと完全休養
三 トレーニングにおける注意事項
(一)加重な練習・全員一緒の練習を避けること
(二)〝科学的トレーニング〟を過信しない
(三)早朝トレーニング実施上の注意事項
第三章 私と競歩
一 競歩のスタート
二 ヨーロッパ派遣
第四章 「現役」を終えて――老後のスポーツ、マスターズ日本一への挑戦
あとがき
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