担当編集者より

巨匠ワイルダーがドイツ人ジャーナリスト相手に八十六年の映画人生を言いたい放題。かのフロイト教授に叩き出されたウィーンの新聞記者時代から、ベルリンではジゴロの日々、ハリウッドに渡るや、シナリオ・パートナーのハードボイルド作家、チャンドラーをいびり、かと思うと六十四回のＮＧでマリリン・モンローにさんざん泣かされ、ガルボとはご近所づきあいで……全編、これ、ワイルダー・タッチ。『お熱いのがお好き』『アパートの鍵貸します』以上の名場面、名台詞が、頁を繰るごとに（全六四〇頁！）登場します。さすがはワイルダー、自分の「伝記」でちゃんと「映画」をつくってしまったわけです。（Ｏ）