書名(カナ) | キセキノイス アップルガヒロシマニデアッタヒ |
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ページ数 | 336ページ |
判型・造本・装丁 | 四六判 上製 上製カバー装 |
初版奥付日 | 2025年01月30日 |
ISBN | 978-4-16-391938-6 |
Cコード | 0095 |
カリフォルニア州クパチーノ市アップル・パーク通り1番地。
そこに71ヘクタールもの広大なApple本社「Apple Park」が広がっている。
iMac、MacBook、iPod、iPhoneを生み出した伝説のデザイナー、ジョナサン・アイブのこだわりが随所に感じられるその空間で、日本製の椅子が数千脚も使われている。
それが「HIROSHIMA」だ。
ジョナサン・アイブも尊敬する日本を代表するデザイナー、深澤直人が生み出した優美な曲線で構成され、木目も美しい椅子は、2023年の広島サミットでも、テーブルとともに首脳会談で使われた。
この日本を代表する椅子を製造しているのが、広島の家具メーカー「マルニ木工」である。
じつは「HIROSHIMA」が誕生したとき、同社は倒産寸前だった。
かつて日本人の生活が洋風化していく波に乗り、100万セット以上も高級なリビングセット、ダイニングセットを売りまくったが、バブル崩壊以降の日本経済の低迷、そして消費者の嗜好の変化も相まって、90年代の後半、経営危機に陥ってしまう。
綱渡りの資金繰り、工場の縮小、そして1928年の創業以来、初となる社員のリストラ……地元広島の企業や金融機関の支援でかろうじて命脈をつなぐなか、創業家である山中一族の三代目は、深澤直人と組んで世界に打って出る決断を下す。
そんな起死回生のプロジェクトを支えたのは、これまで培ってきた、ものづくりの力だった。
追いつめられていた企業を救った「奇跡の椅子」。それにこめられた熱い思いと、誕生の物語。
序章 Apple Park訪問
……世界的な建築家ノーマン・フォスターが設計を手がけ、iMacやiPod、iPhoneの革新的なデザインで一世を風靡したデザイナーのジョナサン・アイブが細部を監修したApple本社「Apple Park」。広島の家具メーカー「マルニ木工」の社長、山中洋は、そこに初めて足を踏み入れたとき、深い感慨に襲われた。
第1章 バブル崩壊、倒産の危機
……100万セット以上も高級な家具セットを売りまくり、日本の家具業界トップをうかがえる位置にまで成長したマルニ。ところが経済低迷の大波に飲まれ、消費者の好みも変わり、苦境に追い込まれてしまった。工場敷地の売却や、創業以来、初めてのリストラを余儀なくされ、金策に走り回る社長は、ついに倒れてしまった。
第2章 事業を失敗して知った「幸せ」
……創業家である山中一族は、保有している約8割のマルニの株や個人資産を洗いざらい並べて銀行へ差し出し、借金の清算にあてたが、それでも足りず私的整理に追い込まれる。そこへリーマン・ショックが追い打ちをかけた。窮地に陥ったマルニを救ったのは、地元・広島の企業だった。
第3章 兆し〜二人の従兄弟とネクストマルニ〜
……負債の整理が一段落したマルニ木工を率いることになったのは、ともに創業者の孫で、従兄弟にあたる二人だった。裕福な家庭で育ち、海外で学生生活を送った二人は、就職先から窮地にあったマルニ木工へ呼び戻される。その二人を待っていたのはベテラン経営幹部の厳しい言葉だった。
第4章 サバイバル・ラン
……後がない状況で、マルニ木工の経営者2人と開発部のトップは、会社の命運をかけて、世界的なプロダクト・デザイナー深澤直人を訪問。マルニ木工の技術力を高く評価する深澤はこう口にする。「わかりました、一緒にやりましょう。作るのは最高の椅子です」。
第5章 奇跡の椅子HIROSHIMAの誕生
……深澤直人から届いた図面をもとに試行錯誤を繰り返すマルニ木工の開発陣。商品として販売するからには強度を確保した上で、デザインどおりの曲線を再現する必要があった。しかも木の色や木目も揃えた上で、量産しなければならないのだ。難題を前にマルニ木工のスペシャリストたちは奮起した。
第6章 HIROSHIMA、アップルと出会う
……HIROSHIMAを携えたマルニ木工は世界を狙って、世界中の家具業界関係者が集まる「ミラノサローネ」に挑む。懸命な営業努力もあって、世界各国へ販路が開けていくなか、「AppleがHIROSHIMAに興味を持っている」という噂が耳に入ってきた。
第7章 マルニヒストリー
……なぜ、深澤直人はマルニ木工と組むことを決断したのか。その背景には、創業以来、マルニ木工が培ってきた技術があった。1928年の創業からその歴史をひもとき、先人たちの工夫と苦労をたどる。
終章 それでも木工家具を作り続ける
……社長の山中洋は、樹齢80年以上の木材を使って椅子をつくっているだけに、50年、100年使えるものをつくる責任がある、と語る。「だからこそ『100年経っても定番として愛される家具をつくり続ける』ということを掲げているんです」。その歩みは止まらない。
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