担当編集者より

本書の訳了後に翻訳者の柿沼さんからいただいたメールに「これはラヴ・ストーリーですね」とあり、虚を衝かれた思いがしました――本作は『ハンニバル』を軽く凌ぐ狂気と退廃が渦巻くサイコ・サスペンスの極致だと、私は思いこんでいたのです。でも本書を恋愛小説と呼ぶのはまさに至言。倫理、道徳……あらゆる束縛を踏み破り、サド侯爵の諸作すら想起させる究極的な性愛を描いた小説なのですから。甘美な猛毒が仕込まれた小説です。どうぞ心してお読みください。（ＮＳ）