作品
身を粉にしてむかえた四十代半ば、放蕩息子と疲れた妻、懸命に支えた家庭にしのびこむ隙間風。老いを自覚する日々、紙屋新兵衛の心の翳りを軸に、人生の陰影を描く長篇。(丸元淑生)
平穏無事な人の世にも、その一隅には闇へおりる梯子がかかっている。人間のはからいをこえ運命の糸にあやつられて奈落におちる男たち。この作家独自の色調でえがかれた人生絵図。
山師、策士と呼ばれ、いまなお誤解のなかにある清川八郎。しかし八郎は官途へ一片の野心さえ持たぬ草莽の志士でありつづけた。維新回天の夢を一途に追うて生きた清冽な男の生涯。
朝の光のなかで竹に縋り歩く稽古をする薄幸の娘。表題作のほか「馬五郎焼身」「おふく」「穴熊」「しぶとい連中」「冬の潮」を収める。市井の人々の哀切な息づかいをえがく名品集!
喧嘩、口論、探し物その他、よろず仲裁つかまつり候。旗本の家を出奔し、裏店にすみついた神名平四郎の風がわりな商売。長屋暮しの哀歓あふれる人生をえがく剣客小説。(村上博基)
(上を参照)
北の定町回り同心・神谷玄次郎。直心影流の冴えた技、探索の腕も抜群だが、役所では自堕落者と見られている。玄次郎は、小料理屋の寡婦のおかみとねんごろ。さて、そこへ事件だ。
戦国武将のなかにあり、ひときわ異彩を放つ不可解な男・明智光秀。その性格と行動は、いまだ多くの謎につつまれている。時代小説の第一人者が初めててがけた歴史小説の異色作品。
同族相討つ凄絶な仇討ちの一部始終をえがいて鮮烈な感動をよんだ表題名篇、加えて「帰郷」「賽子無宿」「割れた月」「恐喝」など全五作を収録。敗者のロマンと賛された初期作品。(常盤新平)
十代将軍・家治の治世、幕府を恨み連綿と暗躍をつづける謎の徒党があった。“八嶽党”と名乗るかれらは老中・田沼意次に通じ奇怪な策謀を開始する。伝奇時代小説の傑作。(清原康正)
剣客小説の新しい試みとして新鮮な話題をさらった「隠し剣」シリーズ。「孤影抄」の姉妹篇である本書は、酒乱剣、盲目剣、女難剣など、登場する剣の遣い手はいよいよ多彩をきわめる。
身を粉にして迎えた四十の半ば。老いを自覚する日々の孤独と心の翳り。紙屋新兵衛の心象を軸に人生の深い陰影を描き出す時代長篇
不敗の秘剣を知るゆえに悲運に見舞われる剣客たち。時代小説に新風を吹込んだシリーズとして定評ある本篇。この著者ならではの深い陰影に彩られた異色の剣客小説。(武蔵野次郎)
荘内藩主世継ぎをめぐる暗闘として史実に残る長門守事件。その空前の危機をえがく表題作の他、「夢ぞ見し」「春の雪」「夕べの光」「遠い少女」など時代小説の純一な世界。(関口苑生)
奈落に陥ちた薄幸の女の晩景を描く表題作のほか、この作家ならではの独自の色彩をたたえる作品世界。異色の剣客小説連作集完結篇
中年夫婦の離縁話をもち込まれ困惑する平四郎。表題作の他、一見気儘な裏店の悲哀あふれる人生絵図をキメ細かな筆致で描く第二巻
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