誰が、なぜ? 現地徹底取材で送る、王国の腐敗
2015年9月、世界の自動車市場でトヨタと1位、2位を争うフォルクスワーゲン(VW)グループで、創業以来最大のスキャンダルが発覚した。
同社は、一部のディーゼル車のエンジンに違法なソフトウエアを搭載することによって、米国の厳しい窒素酸化物規制をかいくぐっていたのだ。欧州最大の自動車メーカーの株価は一時約40%下落し、250億ユーロ・3兆5000億円の株式時価総額が吹き飛んだ。マルティン・ヴィンターコルンCEO(経営最高責任者)は、引責辞任に追い込まれ、トヨタ打倒の夢は、一瞬にして崩れ去った。
この事件によるVWの負担総額は7兆円から13兆円にのぼる可能性がある、と言われる。世界中に12の自動車メーカー、60万人の従業員を抱える、ドイツの看板企業、コンプライアンス(法令順守)を重視する優良企業が、なぜ排ガスデータを捏造したのか?
25年間にわたってドイツで働き、この国の経済・社会について多数の本や論文を発表してきたジャーナリストが、世界の経済史に残る巨大スキャンダルを徹底取材。日本では伝えられない資料を駆使して、事件の経過、VWの歴史、社内権力構造を分析。事件の闇に光を当てる。
第1章VW排ガス不正の衝撃
粉砕されたトヨタ打倒の夢/端緒は草の根の走行実験/上限値の35倍の排出データ/違法ソフト使用を「自供」/史上3番目の大規模リコール/VW株価、一時暴落/根強いディーゼル信仰/他人事のような辞任声明/社内調査の不十分さを露呈
第2章帝国の内なる不安
最高権力者・ピエヒ/衆人環視の中で部下を難詰/VW帝国の父・ポルシェ博士/ハイブリッドカーや電気自動車を開発/ヒトラーが国民車開発を命令/「家では車のことしか話さなかった」/骨肉の経営権争い/「経営に調和は不要だ」
第3章不正はいかに行われたのか
訴訟抗弁書が明らかにする不正の実態/米国市場攻略の大号令/「取締役よりも下のレベル」の犯罪?/違法ソフト搭載エンジンが米国攻略の要に/見逃された不正発覚の端緒/なぜ情報開示は遅れたのか/米国の司法リスクを過小評価/危機管理システムの機能不全
第4章襲いかかる巨額の経済負担
米国でマンモス訴訟開始/米国監督庁との交渉が難航/VW、当局・原告団と和解案をめぐり合意/米国以外でも罰金や訴訟/未熟だったコミュニケーション/史上最悪の赤字
第5章不正は氷山の一角
すべての企業が抱えるジレンマ/デジタル革命に対応できるか/変革と合理化に抵抗する労働組合/歴史的転換点に立つVW/日本への教訓
(以上抜粋)
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