ドナルド・キーンは生前、日本の新聞社・出版社の求めに応じて自伝を3冊刊行したが、まとまった評伝はこれまで書かれてこなかった。『日本文学史』をはじめ、長年のキーンの日本文学研究についての本格的な批評・研究もあまり見られないのではないか。数々の文学賞や文化勲章を受け、晩年に帰化してからは多くのメディアに登場したが、「学者ドナルド・キーンは、こうした受賞も含めて世間で持て囃されるか、あるいは無視されるか、そのどちらかの扱いしか受けてこなかったような気がする」と、40年来の友人で、『明治天皇』『日本人の戦争』などを翻訳した著者は指摘する。
ドナルド・キーン生誕101年、ユーモアと本物の知性を兼ね備えた文人の生涯をたどり、その豊かな仕事に光をあてる1冊。
【目 次】
第一部 私説ドナルド・キーン
ドナルド・キーン小伝
私説ドナルド・キーン――異邦人の孤独
第二部 日本文学者の原点
十七歳の「フローベール論」
二十代の「告白」――終戦直後に書かれた横山正克宛てキーン書簡を読む
第三部 翻訳作法
ドナルド・キーンから学んだ翻訳作法
第四部 評伝を読む
晩年の「評伝」三作を読む――明治天皇、渡辺崋山、正岡子規
エピローグ キーンさんとの時間
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