電子書籍

泣く男

古典に見る「男泣き」の系譜

価格:※各書店サイトで確認してください
発売日2023年09月27日
ジャンルノンフィクション

男だって、泣いていいんだよ!

 転んで泣く小さな男の子をみて、「泣くな、男だろ」と小声で呟く。そして、立ち上り駆け寄ってきた子を、「よしよし、偉いぞ」と頭を撫でてやる。強くあれ、雄々しくあれかしと、日本の男の子は育てられてきた。
 いつからか。
 日本の古典を紐解くと、英雄豪傑ほど派手に泣いている。「男泣き」という言葉もある。
 そして、「なく」ことを示す字の多いこと多いこと。
 啼、泣、号、呱、嘹、噭、欵、慟、啾、喞、これらはすべて「なく」ことを著わした字である。悲しくて泣く、大声を出して泣く、子供が泣く、遠くまで聞こえるほど泣く、声が出ず涙を流して泣く、さらにいえば,涕泣、慟哭、嗚咽、泣血、哀慟、歔欷、さめざめと泣く、めそめそと泣く……。
 本書は、古典に見える泣く男の姿百態を辿りつつ、「男泣き」の実相に迫ろうという試みである。
 材は主として、記紀、万葉、古今の歌集や、伊勢、平家、太平記など文学史書の類から採った。
 トップバッターは須佐之男命! そして倭建命、大伴家持ときて、やや色好みの涙、在原業平、源頼政、泣きそうもない木曽義仲を経由して、楠木正成と豊臣秀吉、最後は吉田松陰でしめる。
 もう、全編泣いてばかり。そう、男だって、いや、男だからこそ泣いていいんだよ、という本なのである。

目次

はしがき

第一章 須佐之男命――泣きいさちる神

第二章 倭建命――神と人のはざまに

第三章 大伴家持――公と私の涙

第四章 在原業平と源三位頼政――色好みの涙

第五章 木曽義仲――猛将の涙とその運命

第六章 大楠公と豊太閤――桜井の駅と難波の夢

第七章 吉田松陰――狂と猛の涙

終 章 涙は何を購うのか

あとがき

担当編集者より

昔から男は泣いてきた。むしろ、大泣きすることは男の特権なのだ。
しかし、何のために泣くかによって、男の価値は上がりも下がりもする。
天下の行く末を思って泣いた正成と、息子のことが心配で泣いた秀吉。
このコントラストこそが、筆者の言いたかったことなのだろう。
しかし、心配するなかれ、源三位の色好みの涙も、男の涙なのである。
さあ、今日も派手に泣くか!

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