世界遺産の登録対象は、かならずしも栄光の歴史を語る場所ばかりとは限りません。そこには、戦争、災害、人身売買、虐殺、拷問、疾病をはじめとして、人類の悲劇の記憶も同時に数多く残されています。
世界遺産という仕組みは、もともと「人類が持つ普遍的な価値を後世に伝える」という精神に基づいて作られましたが、日本では地域活性化や観光振興の起爆剤のように誤解されています。
そこで、本書では「人類の悲しみの記憶を巡る旅」と定義される「ダークツーリズム」の方法論を用いて、世界遺産のなかでも、とくに悲劇の場(負の世界遺産)として扱われている登録地を旅した文明論的な紀行集として展開していきます。
本書を通じて、世界遺産が持つ意味の核心や、ダークツーリズムという新しい旅のスタイルが持つ可能性に触れることができる1冊となります。
はじめに
第1章 世界遺産の本来の趣旨とダークツーリズム
第2章 アウシュビッツとクラクフから考える
第3章 産業遺産の光と影
第4章 島とは不思議な存在
第5章 潜伏キリシタン関連遺産を観る目
第6章 復興のデザインと世界遺産
第7章 コロナ禍で考える世界遺産
付章 カリブの旅
あとがき
参考文献
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