単行本

悲しみと無のあいだ

1,540 (税込)
発売日2015年07月22日
ジャンル小説
商品情報
書名(カナ) カナシミトムノアイダ
ページ数 152ページ
判型・造本・装丁 四六判 上製 上製カバー装
初版奥付日 2015年07月20日
ISBN 978-4-16-390303-3
Cコード 0093

「その日の長崎」を描くための大胆で繊細な試み

長崎の被爆にこだわりつづける芥川賞作家の、思索と創作イメージの深まりを示す2篇。

原爆で妻と子どもを喪った自由律俳句の俳人、松尾あつゆきの日記を読みながら、「被爆者の証言やエピソードを粘土のようにこねまわして物語(フィクション)をこしらえてきた」自分へのうしろめたさを意識する「わたし」。林京子さんの「自由に書いていいのですよ」という言葉から、さらなるイメージの飛翔がはじまる――。【「愛撫、不和、和解、愛撫の日々」】

戦争を経験し、原子爆弾の光景を目撃した父の病死。家族と葬儀の準備をしながら「わたし」は、言葉をもたず、その光景を語らなかった父のかわりに、「感傷に流されることなく人間のしわざを告発するなにかを書くことができないか」、模索を始める。
愛読してきた作品……フォークナーの『八月の光』や宮沢賢治の『よだかの星』、アンリ・デュナンの『ソルフェリーノの記念』やクロード・シモンの『フランドルへの道』にインスピレーションを得て文体を掴み取り、「廃墟のなかをさまよう十六歳の父の内奥にしみこんでいった被爆の実相」を書こうと試みる。
それが「しょせんは想像でしかない」、「なにもわかりもしない」、なぜなら「わたしたちはついに語り合えなかった」のだから、と自らを戒めながらも、作家は想像力の翼をひろげ、その日の長崎を描き出そうとする。【「悲しみと無のあいだ】

担当編集者より

長崎の被爆についてこだわり続ける青来有一さんの新作は、あらためて「七十年前の長崎の八月九日」を書くこと、書く方法について深く思索しながら紡がれた物語です。原爆で妻子を亡くした自由律俳句の俳人・松尾あつゆき、そしてあの日の長崎で原子野をさまよった父親が見た光景を描くため、筆者は大胆で繊細な手法を試みます。

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