単行本

逆転の大戦争史

2,695 (税込)
発売日2018年10月12日
ジャンルノンフィクション
商品情報
書名(カナ) ギャクテンノダイセンソウシ
ページ数 728ページ
判型・造本・装丁 四六判 軽装 並製カバー装
初版奥付日 2018年10月10日
ISBN 978-4-16-390912-7
Cコード 0098

忘れられた国際条約が、実は世界史を変えた

ペリーによって砲艦外交の屈辱を嘗めた日本は
西周(にし・あまね)が、「侵略は善」たる「旧世界秩序」を学ぶ
朝鮮を併合した日本にしかし、満州国は認められなかった。
一九二八年に世界は大きく変わっていたのだった

「旧世界秩序」。戦争は合法、政治の一手段。戦争であれば
領土の略奪、殺人、凌辱も罪に問われない。しかし、経済封鎖は違法。

「新世界秩序」。戦争は非合法。侵略は認められない。
経済封鎖と「仲間外れ」によって無法者の国を抑止する。
が、どんな失敗国家も侵略されず内戦の時代に。

「パリ不戦条約」という忘れられた国際条約から
鮮やかに世界史の分水嶺が浮かびあがってくる。

序章 一九二八年という分岐点
パリ不戦条約の重要性は明らかに過小評価されている。これ以降、戦争は違法とされたのだ。一九二八年を起点として中世から今日までの世界史を見ると、鮮やかに世界秩序の分岐がみてとれる。

第一部 旧世界秩序

第一章戦争を合法化したオランダ人弁護士
戦争を合法にする理論は、十七世紀の東オランダ会社の社員の略奪行為を正当化するために、オランダ人の弁護士がまず考えた。その弁護士グロティウスは、本国の主権が及ばない範囲の戦闘行為は合法とした

第二章四五〇の宣戦布告文書を分析する
筆者は、一五世紀から第二次世界大戦に至るまで四五〇の宣戦布告文書を収拾した。妻を奪われたことを理由に戦争を宣言した神聖ローマ国皇帝から平和的解決ももたらしたカウンター・マニフェストまで

第三章殺しのパスポートをいかに得たか
平時では殺人は犯罪である。しかし、なぜ戦時では、それが合法となるのだろうか? 虐殺行為をしたアメリカ騎兵隊の将校を撃ち殺したスー族の男が、無罪となるまでをみながら、その論理の起源を考える

第四章経済制裁は違法だった
米国に赴任したフランスの大使ジュネは、私掠船を仕立て英国船をだ捕した。フランスは英国と戦争状態にあったのだ。が、米国領土内でこうした行為を許すことは米国は中立を放棄したことと見なされる

第二部 移行期
第五章戦争はこうして違法化された
第一次世界大戦の多くの犠牲者は、人類に考察を促した。シカゴの企業弁護士は戦争自体を違法化することを思いつく。やがてそれは、アメリカ大統領が多国間協定として提案するパリ不戦条約につながっていく。

第六章日本は旧世界秩序を学んだ
ペリーの砲艦外交で日本は旧世界秩序を苦渋のなか、学んだ。それを今度は朝鮮の併合に利用する。日清・日露戦争と旧世界秩序を利用しながら大陸に進出した日本は、パリ不戦条約の精神を揺さぶることになる。

第七章 満州事変は新世界秩序の最初の試金石だった
パリ不戦条約で侵略は違法になったはずだった。署名した日本はしかし、それを無視して満州国を「立国」する。「新世界秩序」を奉ずる国々は、日本に対する石油の禁輸措置などの経済制裁でそれに応じた。

第八章 新世界秩序の勝利
第二次世界大戦は、パリ不戦条約で、それまでの植民地支配を固定化する連合国と、侵略戦争によってそれを阻もうとする枢軸国との戦いだった。いわば「新世界秩序」と「旧世界秩序」の戦いだったのである。

第九章 ソ連を組み込む
拒否権とx事項にこだわるソ連と妥協をしてでも、国際連合にソ連を組み込むことは、戦後の大きな成果となる。チャーチルとルーズベルトは懸命の努力をする。一方敗戦国の憲法には戦争放棄の一文が入る。


第一〇章 ナチスの侵略を理論化した政治学者
カール・シュミットは、侵略戦争を非合法とみなす「新世界秩序」に抗して、ナチスの拡大政策を理論づけした学者だった。「新世界秩序」はしょせん連盟を軸とした、米・英・仏・露の権益固定化にすぎないと。


第一一章 ニュルンベルグ裁判の論理を組み立てる
どうすれば、ナチの戦争指導者を罪に問えるか? チェコの法律家は、パリ不戦条約に署名している枢軸国には、「旧世界秩序」下ではあった戦争時の殺人罪等の免責はない、ことに気がつく。


第十二章 戦争犯罪を個人の責任として裁く
裁判が始まった。原告側は、パリ不戦条約を援用し、戦争犯罪を個人の責任として裁く。それは「旧世界秩序」への弔鐘であった。ナチスの侵略戦争を理論づけしたカール・シュミットも逮捕される。


第三部 新世界秩序


第一三章 一九二九年以降、永続的侵略は激減した
一八一六年以降の侵略された土地の面積をグラフにしてみるとはっきりとわかることがある。それは一九二九年以降激減することだ。第二次大戦までに侵略された土地も、連合国はもとの持ち主に返したのだ

第一四章 国の数が増えたのには理由がある
戦争の違法化、征服の終焉、地球規模の自由貿易は、小国が存在できるだけでなく繁栄できることを意味した。「旧世界秩序」では植民地で調達した物資は、今では貿易で手に入る。植民地の独立が始まる。

第一五章 失敗国家の内戦
国と国との争いは、旧宗主国が領土線をあいまいなまま引き継いだことによって発生している。そしてもっとも深刻なのは、失敗国家ですらも侵略されないことから、内戦が新しい時代の戦争となったのだ。

第一六章 「仲間はずれ」という強制力
戦争が違法である「新世界秩序」では、「仲間はずれ」によって無法者国家を牽制する。アイスランドの自治にもちいられたこの方法は、ブッシュ政権も従わざるをえなかかった。イランの核放棄にも有効だった

第一七章 イスラム原理主義は違う戦争を戦う
イスラム原理主義の起源は、サイド・クトゥブというエジプト人にさかのぼる。一九四八年に米国留学したクトゥプは、アラブの神のために侵略戦争をすべきだとした。それが「イスラム国」に受け継がれる

終章 国際主義者たちを讃えよ
米国は、テロに対する「自己防衛」を理由にシリア、イラクの領土に空爆を実施した。国際連合憲章で、自己防衛の権利が認められるのは「武力攻撃」を受けた場合に限られる。「新世界秩序」は不完全なのか?

著者

オーナ・ハサウェイ

スコット・シャピーロ

船橋 洋一

1944年、北京生まれ。ジャーナリスト。法学博士。公益財団法人国際文化会館グローバル・カウンシルチェアマン。アジア・パシフィック・イニシアティブ創設者。英国際戦略研究所(IISS)評議員。東京大学教養学部卒業後、朝日新聞社入社。北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長、コラムニストを経て、朝日新聞社主筆。『カウントダウン・メルトダウン』(文藝春秋)で2013年に大宅壮一ノンフィクション賞受賞。近著に『地経学とは何か』(文春新書)、『国民安全保障国家論』(文藝春秋)などがある。

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