作品紹介

「米国人は立憲君主をまったく理解していない」「君主は単にゴム印を押す存在ではない」(英外務省内部文書)
戦後、GHQによって「象徴」とされた天皇のあり方について、立憲君主制の老舗の英国は、そんな表現で、日本の宮内庁に助言をしていた。
そこで、昭和天皇はどう動いたのか――。

本書は、近年機密解除された英米の公文書をたんねんに読み解き、奇しき縁で筆者にもたらされた昭和天皇側近のインタビューテープを繰り返し聞くことで得られた、まったく新しい「象徴」天皇の姿である。

戦前、政府、軍部の上奏を信頼した結果、未曾有の敗戦を招いてしまったという苦い経験から、戦後の昭和天皇は自ら世界情勢の情報を集め始めた。とくに、国際共産主義に対する警戒心を隠そうともせず、英米の要人と情報交換をするさまは、あたかも天皇自身が国際政治のプレイヤーであったかのようだ。
さらに、次代を担う皇太子には、自分で考え、自分の意思で行動することを教えるため、バイニング夫人を招聘するなど、新しい教育環境を整えた。
昭和、平成と受け継がれた、新しい天皇像は、海外留学を経験した始めての天皇である令和の御世の新天皇のもとで今、花開こうとしている。

天皇三代の行動を「インテリジェンス」という側面から再構築すると、「象徴」という言葉だけではとらえられない、本当の君主像が見えてくる。

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担当編集者より
本書を読んで、あらためて昭和天皇の凄みのようなものを感じました。テレビなどで見た温和な表情の裏で、日本だけでなく、世界の平和をいかにして実現するかに心を砕き、自ら情報を集めていたという事実は、「象徴」という言葉では表せない、本当の天皇の姿を浮き彫りにしています。また、イギリス女王やタイ国王との公表されなかった会話は、昭和天皇が世界の王家の間でいかに慕われた存在であったかを教えてくれます。
目次
●プロローグ
きっかけは、バーナード・クリッシャーとの偶然の出会いだった。彼から託された二〇本の録音テープ、それが歴史の扉を開ける鍵となった。

●第一章 「真崎テープ」の中の昭和天皇
長年、宮中の通訳を務めた真崎秀樹は生前、クリッシャーに天皇と世界の要人とのやり取りを明かしていた。そこからは共産主義への警戒を隠そうともせず、国際情勢のインテリジェンスを求めた天皇の姿が浮かんだ。

●第二章 田中清玄がもたらした国際情報
「東京タイガー」の異名を持つ国際的フィクサー・田中清玄。終戦直後、昭和天皇に単独拝謁した彼は、皇室の影の藩屏として共産党に戦いを挑んだ。そして入江相政侍従長を通じ、欧州の名門ハプスブルク家のインテリジェンスを密かに届けていく。

●第三章 天皇制を護った人たち
占領期、天皇制維持のため米国で暗躍した「ジャパン・ロビー」があった。その中心メンバーが日系二世のケイ・スガハラだ。元情報機関員の彼は、天皇側近と水面下で連携し、昭和天皇の初訪米を支援するなど日米関係の黒子役を担う。

●第四章 皇太子明仁の「ローマの休日」
昭和天皇が、わが子の家庭教師にバイニング夫人を選んだのはなぜか。訪米中、ロックフェラー家の配慮で生まれた「自由」な一日を、皇太子はどう過ごしたのか。自分の意思で行動することを学んだ皇太子は、やがて平成の世の天皇となる。

●第五章 天皇明仁「慰霊の旅」と「生前退位」
初めて「平民」出身の妃を迎えた皇太子は、即位後、ともに手を携えながら戦争の激戦地を訪れ、犠牲者に祈りを捧げる。そして自分の意思で行動する天皇が最後に決断したのが、明治以降、制度から消えていた「譲位」だった。

●第六章 浩宮のオックスフォード留学
独自の情報網を持ち、自分の意思で行動する立憲君主――戦後、昭和天皇が抱いたであろう新たな天皇像は、平成をへて令和に受け継がれた。新天皇となった浩宮は、若き日の英国留学で一体、何を学んだのか。

●エピローグ
「インテリジェンス」、「自分の意思」、そして「歴史のジグソー・パズル」――この三つの言葉こそ、三代にわたる天皇家の戦いの物語の象徴だった。
商品情報
書名(カナ) エンペラー ファイル テンノウサンダイノジョウホウセンソウ
ページ数 192ページ
判型・造本・装丁 四六判 軽装 並製カバー装
初版奥付日 2020年02月25日
ISBN 978-4-16-391177-9
Cコード 0095

著者

徳本 栄一郎

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