単行本

いじめの聖域

キリスト教学校の闇に挑んだ両親の全記録

1,980 (税込)
発売日2022年11月09日
ジャンルノンフィクション
商品情報
書名(カナ) イジメノセイイキ  キリストキョウガッコウノヤミニイドンダリョウシンノゼンキロク
ページ数 384ページ
判型・造本・装丁 四六判 軽装 並製カバー装
初版奥付日 2022年11月10日
ISBN 978-4-16-391622-4
Cコード 0095

子どもが自殺したら、親にはどんな現実が待っているのか?

 2017年4月、長崎海星高校2年の男子生徒が首つり自殺した。いじめを示唆する遺書が残され、後に加害者の実名が記されたノートも発見された。
 親族のみでひっそりと葬儀を終えた両親に対し、学校の教頭は自殺を「突然死」や「転校」に偽装することを提案する。学校がいじめを隠蔽しようとしているのではないかと疑問を持った両親は、息子がいじめを苦に自殺したことを全校生徒や保護者に伝え、再発防止に努めてほしいと要望する。
 学校は自殺の原因を調査する第三者委員会を設置するが、第三者委がいじめと自殺の因果関係を認める結論を出すと、その報告書の受け入れを拒否する。両親が2019年2月に記者会見してその事実を公表すると、全国的な大きなニュースとなった。 だが、その後も、報告書を受け入れて再発防止策を履行するように県の指導を受けながらも、学校が態度を改めることはなかった。
 そして、両親の会見から3カ月後、長崎海星高校では新たな自殺者が出た――。

目次

第1章 突然の別れ
 2017年4月20日、長崎市の私立海星高に通う勇斗が公園で自殺し、いじめを示唆するような遺書や手記が、自宅と現場で見つかる。憔悴する父大助に対して、学校側は自殺を「突然死」や「転校」として扱わないかと偽装を提案する――。

第2章 両親の後悔
 穏やかな性格で学業成績も優秀だった勇斗は将来、東京ディズニーリゾートで働くことを夢見ていた。自殺の約2週間後、いじめの加害者の実名が書かれた勇斗の手記が発見され、大助と母さおりは「悩みに気付けなかった」と自責の念に駆られる――。

第3章 学校への要望
 勇斗の自殺の真相を明らかにするため、大助とさおりは第三者委員会を設置して原因を調査するよう学校側に要望する。愛息の死を風化させたくないと、思いの丈を学校側にぶつける2人だが、煮え切らない教職員の態度に不信感を深めていく――。

第4章 決裂
 海星高では過去にも別の生徒が自殺しており、その事実を知ったさおりが教職員を問いただす。一方、第三者委が発足して調査が始まると、学校側は全てを丸投げして遺族側の要望をことごとく拒否するようになる――。

第5章 長崎県は学校に味方した
 学校側を信じられなくなった大助とさおりは、私学を監督する長崎県学事振興課に助けを求める。紆余曲折を経て学校と遺族、県の3者での話し合いの場が設けられるが、その席で県担当者は学校側を一方的に擁護する――。

第6章 拒絶された報告書
 2018年11月、約1年4カ月の調査を経て、第三者委は「同級生によるいじめが自死の主たる要因」と報告書で結論付ける。だが、再発防止への取り組みに期待する大助とさおりに対して、学校側は報告書を不服として受け入れない旨を通知する――。

第7章 日本スポーツ振興センター
 子供が学校でのいじめで自殺した場合、日本スポーツ振興センターから遺族に災害共済給付金が支払われる制度がある。大助とさおりは手続きを進めるよう学校側に求めるが、何かと理由を付けて拒まれ続け、とうとう申請の時効が近づく――。

第8章 聖域の私学
 大助とさおりが記者会見を開き、勇斗の件が公になった後も、学校側は対外的には沈黙を守った。第三者委の認定を受けて手のひらを返した県に、報告書の内容を履行するよう再三の指導を受けながらも、海星高の教職員が態度を改めることはなかった――。

第9章 悲劇、再び
 2019年5月、海星高の生徒から新たな自殺者が出て、大助とさおりは強い衝撃を受ける。一方、遺族側の再三にわたる要請を受けて、学校側はようやく第三者委の報告書を公開するが、その方法は不誠実なものだった――。

第10章 膠着状態
 日本スポーツ振興センターが災害共済給付金の支給をなかなか決定せず、遺族側は不安を募らせていく。学校側は報告書の裏付け資料の開示を第三者委に要求し、公正さを確保する観点から断られると、長崎簡易裁判所に調停を起こす――。

第11章 責任から逃れたい大人たち
 学校側が頑なにいじめ自殺を認めない背景には、県の初期対応のまずさがあると考えた遺族は、筆者に関係者との会話の録音データを託す。それを基に書かれた記事が世に出ると、学校と県はインターネット上で炎上状態に陥る――。

終章 立ち上がり始めた人々
 勇斗の自殺に関する報道を見た市民や在校生らが有志会を結成し、学校側に記者会見を開いて説明責任を果たすよう求める署名活動を始める。この事態を受けて、学校幹部と代理人弁護士は初めて筆者のインタビューに応じ、その言い分を明らかにする――。

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担当編集者より

まだ20代の若い記者から原稿を読んでほしいと言われ、一気に読み終えた後、この物語は一人でも多くの人に読んでほしいと強く思いました。校訓に「神愛・人間愛」を掲げるカトリックの私立学校とは思えない不誠実な対応の数々に驚き、孤立無援の状況からなんとか学校の姿勢を改めさせようと必死に行動する両親の姿には胸を打たれました。わが子が突然亡くなった時、親はなぜ異変に気付けなかったのかと自分を責め、途方に暮れます。その深い後悔と悲しみを抱えながら、いじめ自殺を認めようとしない学校と対峙しなければならなかった葛藤や苦悩。そして、わが子の死を無駄にせず、二度と同じような悲劇を繰り返してはならないと願う強い気持ち。時にくじけそうになりながらもかすかな希望を見出しながら闘い続けた両親の5年間を描いたノンフィクションです。学校や行政、マスコミの有り様など、様々な意味で考えさせられる作品です。

著者

石川 陽一

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