〈いけない〉シリーズ ヒントサイト
ここは「いけない」シリーズのヒントが見られるページです。
『いけない』『いけないII』の各章の写真について、真相の解明に行き詰まった際にご利用ください。
ネタバレとなっておりますので、ご覧になる際は自己責任にてお願いします。
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*本文からの引用は文庫版のテキストです。
『いけない』
第一章 弓投げの崖を見てはいけない →死んだのは誰か?
ヒント1
十王還命会の吉住が運転している車が轢いてしまったのは誰だろう? 候補は、刑事の隈島と森野雅也、そして安見邦夫の3人だ。最終ページでアスファルトに転がった〈その手に握られていたもの〉は、隈島ならラークの箱、森野雅也なら包丁、安見邦夫なら矢ということになる。轢かれた人物については、巻頭のサイクリングマップと章末の地図の写真を、本文の内容と照らし合わせながら考えてみよう。
ヒント2
十王還命会の宮下の視点で書かれた14節にある、〈ゆかり荘の前を抜けようとしたとき、突然フロントガラスの右側から人影が現れ〉という文章に注目すると、事故が起きたときの状況がわかってくる。このとき宮下たちはどこからゆかり荘へ向かっていたのか?
ヒント3
宮下たちは白蝦蟇シーラインを南へ下ってゆかり荘の前を通過しようとしていた。
ヒント4
〈フロントガラスの右側から人影が現れ〉たことから、左側にあるゆかり荘から出てきた安見邦夫は犠牲者ではないことがわかる。残るは雅也と隈島だ。
ヒント5
事故が起きる前の2人の行動は15節と16節に書いてある。2人は同じタイミングでスーパータイヘイの近辺にいたようだ。それぞれ、どのようにゆかり荘へ向かったのか、書いてある箇所を探してみよう。
ヒント6
雅也のとった経路は15節に〈このまま商店街の南端まで行き、左へ曲がればアパート前の道に出る〉とある。一方、隈島の選択は16節の〈山車の背後を抜けて路地に駆け込んでいた〉だ。章末の地図を見て、それぞれどうやってゆかり荘へたどり着くか確認してみると……。
ヒント7
ヒント〔2〕の〈ゆかり荘の前を抜けようとしたとき、突然フロントガラスの右側から人影が現れ〉から、犠牲者はゆかり荘の前に飛び出す経路をたどった人物となる。つまり、それは商店街を抜けるのではなく路地を通ることを選んだ隈島だ。
第二章 その話を聞かせてはいけない →なぜ死んだのか?
ヒント1
珂を連れ去り、弓投げの崖から突き落とそうとした男と女は、突然現れた“あいつ”に袖を引っ張られて命を落とすことになった。しかし妖怪など、この世に存在するはずがない。すると“あいつ”とはいったい誰のことなのか? 章末の写真から考えてみよう。
ヒント2
章末の写真は、珂が連れ去られる直前に観ていたニュース映像らしい。その日の日中に録られた(6節)と思しき映像には、インタビューを受ける男女の後ろに、白い軽ワゴン車に乗り込もうとしている少年が映っている。彼の服装に覚えはないだろうか。
ヒント3
少年が着ているトレーナーには「H」の文字が見える。これは珂のクラスメイト山内がいつも着ている〈胸にHAPPYと書かれた白いトレーナー〉(5節)と一致する。つまり、珂を助けたのは軽ワゴン車に潜んでいた山内だったのだ。しかし、なぜ山内はそこまでして珂を助けたのだろう。
ヒント4
3節には、山内の危機を珂が救った過去のエピソードが書かれている。そのとき山内は珂に〈――助けられたから、お返ししなきゃ〉と言った。このことから、文房具店での殺人を目撃したことを珂から聞いた山内は、珂に危険が迫る可能性を察知し、恩返しの機会と考えたのだろう。
第三章 絵の謎に気づいてはいけない →罪は誰のものか?
ヒント1
章の最後で、水元がスマートロックと手帳の絵について何か気づいた様子が描かれている。それが何なのか、章末の写真にヒントが隠されている。
ヒント2
写真には手帳と、そこにボールペンで何かを書き込もうとしている手が写っている。イラストから、この手帳は中川が使っていたものだと思われるが、6節のイラストと写真のイラストは明らかに違う。それが意味することとは?
ヒント3
中川はスマートロックを用いた守谷のトリックを見破り、手帳にメモした。しかし何者かがそれを、ドアノブで首を吊った宮下志穂のイラストに変えたらしい。それは誰の仕業だろうか。写真に写る、張本人のものと思われる手、そしてボールペンに注目すると……。
ヒント4
この人物が握るボールペンはいかにも高級そうだ。本文内で高級ボールペンの話題が出たのを覚えているだろうか。
ヒント5
2節に竹梨が隈島から高級ボールペンのモンブランをプレゼントされたという逸話が書かれている。〈ペンの尻についた、白い花のような、星のようなマーク〉という特徴も写真のボールペンと一致していることから、手帳を書き換えたのは竹梨だとわかる(あわせて5節を注意深く読んでみよう)。
ヒント6
なぜ竹梨はわざわざ守谷を容疑から遠ざけるような細工をしたのか? 竹梨の行動に怪しい点はなかっただろうか。
ヒント7
7節では十王還命会の集会に竹梨が潜入するが、竹梨と守谷とのあいだには「刑事」と「捜査対象」以外の関係があるような描写も見られる。だとすると、竹梨がその場にいたのは“潜入”ではなかったのかもしれない。では、どうして竹梨は集会にいたのか。下記の点を思い出してみると、それがわかるかもしれない。そして、ラストに書かれている水元の死の真実も……。
- 竹梨は、宮下が全国の幹部で最も若いという事実を知っていた(1節)。
- 竹梨は、守谷夫妻が同い年であることも、2人の生活スタイルも知っていた(2節)。
- 集会で祝詞が唱えられたとき、竹梨はほかの信者たちといっしょに口を動かすことができていた(7節)。
- 竹梨は妻を自殺で亡くしている(8節)。
- 竹梨には、自分が信じていた世界を守ろうとする性質がある(8節)。
終 章 街の平和を信じてはいけない →????????
ヒント1
この章には安見邦夫のものと竹梨のもの、二つの封筒が登場する。最後の写真の封筒はどちらだろうか。
ヒント2
2節と3節から、邦夫は竹梨の鞄から間違えて「竹梨の封筒」を取り、それを破ってしまったことがわかる。つまり最後の写真に写っている封筒と手紙は邦夫が持参したものだ。その手紙がすべて白紙だった意味を考えてみよう。
ヒント3
邦夫の手紙は、自身の犯した罪を自白する内容を妻の弓子が代筆したものだった。そこに何も書かれていなかったということは、弓子が便箋を白紙のものとすり替えたか、あるいは代筆するふりをしながら、実際には何も書かなかったと考えられる。邦夫の罪は今後も明らかにされないままだろう。そして同時に、竹梨が罪を告白した手紙も、邦夫に破られて風に飛ばされてしまった。この街で起きた出来事と、それに関わった者たちがその後どうしているかを思い浮かべて、もう一度この章のタイトルを見てみると……。
『いけないII』
第一章 明神の滝に祈ってはいけない →殺されたのは誰か?
ヒント1
章末の写真には、避難小屋の入り口が写っている。これは6節の最後で大槻が撮ったものだと思われる。この写真に何か違和感はないだろうか?
ヒント2
注目すべきはドアの左側に写っている干支だるまだ。この章に、干支に関するシーンがいくつかなかっただろうか?
ヒント3
本文の干支に関するシーンは下記のとおり。
- 年賀状にネズミの絵が描いてある(1節/桃花の視点)
- 干支だるまは〈尻尾がちょろっと丸まっている〉(2節/大槻の視点)
- 避難小屋の入り口の脇に雪で作られたネズミがある(3節/桃花の視点)
- 同じくドアの隣の雪ネズミ(5節/桃花の視点)
- 干支だるまの写真を撮る(6節/大槻の視点)
ヒント4
干支は「ネズミ」だと何度も書かれているのに、章末の写真の干支だるまはどう見ても「ウシ」だ。これはどういうことなのか。
ヒント5
この章は奇数の節が桃花の視点、偶数の節が大槻の視点で書かれている。そしてヒント〔3〕の手がかりを確認すると、干支がネズミであるとはっきり書いてあるのは奇数の節だけだ。2節にある〈尻尾がちょろっと丸まっている〉は一見ネズミのことを言っているようにも読めるが、写真のウシの干支だるまにも当てはまる。このことは何を意味するのか。
ヒント6
干支はネズミ年の翌年がウシ年となる。つまり大槻の視点(偶数節)で書かれていることは、桃花の視点(奇数節)で書かれていることの1年後なのだ。それがわかったら、6節から8節に書かれている“冷凍庫の死体”について思い出してみよう。
ヒント7
各節では“冷凍庫の死体”について、このように書かれていた。
- 6節(現在)〈ぽっかりとあいた四角い空間に少女が座っている。一年前、山が暗くなったことに困り果て、この小屋に懐中電灯を借りに来た少女〉
- 7節(1年前)〈棚板の下はぽっかりと空いた四角い空間で、そこには「h」に似たかたちの、とても大きな、白いものがあった〉
- 8節(現在)〈凍った状態でも、一年ものあいだずっと捜していた女子高生だということが、すぐにわかるだろうか。彼女の隣で同じように眠っている死体が、二十九年前に消えた大槻の母だと、警察はいつ知るだろう〉
ヒント8
なお、この章には冒頭にも写真が挿入されていた。状況からして、7節の終盤で大槻が桃花を撮影したものだろう。このとき桃花はとっさの機転で、避難小屋の冷凍庫に隠れていたのは自分ではないと、大槻に思い込ませようとした。いっぽうで大槻は〈確実に写っていると思っていたもの〉が写真のなかに見当たらず、いったんは桃花の言葉を信じたようだ。いったい“それ”は何だったのか。そして桃花はどうやって“それ”を隠したのか。大槻は自分の撮った写真をじっくり見ることで桃花の策略に気づいたようだが……。
ヒント9
桃花が隠していたのは、彼女の“身体の一部”のようだ。
第二章 首なし男を助けてはいけない →死を招いたものは?
ヒント1
章の最後で真が伯父さんの部屋を訪ねたとき、そこで何が起きていたのかを写真から探ってみよう。右端にぶら下がっているものは何か?
ヒント2
4節には“首吊り男”の特徴として〈指などはなく、手足の先はただ布が丸く縫い合わされているだけだ〉と書いてある。さらに服装にも注目してみると、この直前に真が見た伯父さんは〈色あせたスウェットの上下を着て〉いたと書かれている(7節)。つまり、写真に写っているのは人形ではなく、首を吊った伯父さんであることがわかる。では、なぜ伯父さんは自ら命を絶ってしまったのだろうか?
ヒント3
7節で真は、軽トラックの事故によってタニユウが川に流されてしまったと考え、そのことを伯父さんに確認する。〈もしかして……殺しちゃったの?〉という問いかけに、伯父さんは震えながら頷き、やがて涙を流して謝罪の言葉を口にする。しかし後に判明するとおり、実際にはタニユウは死んでなどいない。川を流れていったのはタニユウではなく、真たちがつくった“首吊り男”だった。そして、伯父さんもそのことをわかっていたはずだ。なぜなら、窓の柵に湿ったつなぎがかかっていたということは、川に入ってその“首吊り男”を回収したのは、伯父さん自身だったのだから。すると、どうして伯父さんはこのとき謝罪の言葉を口にしたのだろう? 真が何か別の話をしていると勘違いした可能性があるのではないか?
ヒント4
真は7節で伯父さんと話したあと、父と祖母の会話を盗み聞く。内容は祖父の死についてだった。父が語るには、祖父が川に流された原因は伯父さんにあった。そして伯父さんは罪の意識から“首吊り男”に自身を投影し、何度も自分を殺しているのではないかという。以上のことを踏まえて、ヒント〔3〕で言及した真と伯父さんの会話を読んでみると……。
ヒント5
真は〈川でのことだけど〉と切り出したあと、〈川を流れてったの……人間だったの?〉〈もしかして……殺しちゃったの?〉とタニユウの名前は出さずに尋ねている。真はタニユウのことを訊いているのに、伯父さんは祖父のこと(彼にとっては父親のこと)を訊かれていると思ってしまったのではないか。
ヒント6
5節の最後、川を流れていく“首なし男”を見たときの、伯父さんの様子。あのとき“首なし男”が父親と重なり、彼の中でトラウマが蘇った。そのあと真が部屋に来たとき、自分が断罪されていると信じ込んでしまった彼は……。
第三章 その映像を調べてはいけない →死体のある場所は?
ヒント1
孝史の死体はどこに埋められているのか。8節の終わり近くに〈息子はいま、いちばん好きだった花の下で眠っている〉という孝憲の独白がある。孝史がいちばん好きだった花とは何だろう? サザンカのようにも思えるが、彼のいちばん好きな花がサザンカだったとはどこにも書かれていない。
ヒント2
章末の写真は、ビデオカメラで撮った映像をテレビに映したもののようだ。画面右下の日付、10月10日について触れている箇所はなかっただろうか。
ヒント3
3節で、隈島が千木家を訪ねた際、智恵子は家族で益子の陶器市へ行ったときのビデオを見ていた。そこに表示されていた日時は〈1997-10-10 2:44:13PM〉。このとき智恵子はすぐにテレビを消しており、いっぽう章末の映像では〈1997-10-10 3:24:06PM〉となっている。つまり章末の映像は、このあとのシーンが、別のタイミングで再生されているときのものだ。では、そのシーンが再生されていたのは、いったいいつなのか。ほかにビデオを再生していると思しき場面は……。
ヒント4
10節に〈問いかける智恵子の横顔を、断続的な光が青白く照らしている〉とある。ほかにテレビを見ている場面はないので、章末の映像はこのとき再生されていたものらしい。だとすると〈――ほら見て、身体が埋まっちゃうよ〉はテレビから流れる孝史の声であり、彼が〈――これいちばん好き〉と言っている花は、画面に映っているコスモスだとわかる。
ヒント5
初めて隈島が千木家を訪れたとき(1節)、居間に〈その座卓には一輪挿しが飾られ、ちょうどいま盛りのコスモスがひと花〉咲いているのを見ている。つまり孝史の死体は、千木家の座卓の下に埋められていることになる。
終 章 祈りの声を繋いではいけない →???????
ヒント1
章末の写真に写っているスマートフォンは誰のものだろうか。
ヒント2
7節の隈島と看護師の会話から、スマートフォンが置いてあるのは、智恵子の病室の床頭台だとわかる。真が届けに来たのはこれだったらしい。そしてそのスマートフォンは6節で真が智恵子を助けた際に彼女が握っていたもの、つまり智恵子と孝憲が隠し持っていた、緋里花のスマートフォンだ(5節)。画面には死んでいるはずの桃花からの着信が。いったいどういうことだろう?
ヒント3
2節には、ときどき両親が桃花のスマホを使って緋里花へ電話をかけていると書かれている。つまりこの着信は、両親からのものだ。画面に表示されている時刻を見ると〈10:01〉。いっぽうラストシーンで隈島が病室の窓から外を眺めているが、このとき運動公園に牡丹祭りの客が入りはじめているので、時刻は10時ちょうどということになる。彼は窓からの光景を、それから〈しばらく見つめていた〉。つまり床頭台でスマートフォンが鳴れば、確実に気づくことになる。それにより、この先いったい何が起きるだろうか。
ヒント4
ここで章タイトルに目を向けてみたい。この物語には、明神の滝に祈りを捧げた人物が複数登場する。彼ら(彼女ら)がそれぞれ何を祈ったのか、思い返してみよう。最後に緋里花のスマートフォンが鳴り、それに隈島が気づくことで、彼ら(彼女ら)の祈りは……。