作品
関東大震災の混乱のさなか、甘粕憲兵大尉らによって、伊藤野枝たちとともに惨殺された大杉栄。自由な恋に生きた前半生から悲劇への軌跡を克明に追った長篇評伝。(多田道太郎)
インドに憧れていた著者は、出家してからはインド巡拝は義務という気持が強くなった。計画断念をくりかえした末の、釈尊の故地を訪ねる熱いおもいを抱いてのインド紀行。(中沢新一)
恋人との愛の床に冬薔薇をかざった薄幸の女性が交通事故死するまでを描く「冬薔薇」など、花をめぐって展開された女たちの人生を、優美哀切に描破した十五の連作小説集。(解説・諏訪正人)
女性インテリアデザイナー、私大の助教授、造花を業とするその妻、ハイティーンの少女、作家の卵など、複雑な人間関係のなかに存在する多様な愛のかたちを描く長篇。(秋山駿)
妻の匂いは濃く、女の匂いは深い。男女の抱擁は愛のいとなみでもあるが、同時に死に通じるいとなみでもある。さまざまな人間関係の底にある絶望を描破した長篇。(秋山駿)
ローマへ去って行った彼。その便りからは、愛のありかは分からない。突然欧州から帰国した人に、彼は私へのプレゼントをことづけていた。ゆれ動く女の心を描いた長篇。(秋山駿)
大女優を母に持ち、魅力ある肢体にめぐまれて女優となった未来子が、あまりの純情さゆえに芸能界の男たちに翻弄され、やがて妖しく変貌してゆく姿を描くモデル小説。(成沢昌茂)
ホテルで情事をたのしむ中年の人妻と、ホテルの美容室で働く現代娘がたまたま出会い、屈折した大人の愛と直線的な若い性が対比的に進行。女の性をさぐる長篇。(秋山駿)
彼女の顔の裏にどんな怨念や未練がうずまいているにしろ、なまめいた花の匂いの中で野良犬のように背をあえがせて吐きつづけた女の哀しさがある。古都の四季を背景に燃えるロマン。
足の裏をくすぐるカーペット、男の息、汗、外人のふやけた躯、夫の躯……濃密な闇にまぎれ秘めやかに交される夜の会話。女たちの情念のかたちをなまめかしく描く。(解説・秋山駿)
平凡な人妻が完璧な娼婦へと変容してゆく過程を描きながら、女の生と性とを根源からえぐり出した「花芯」をはじめ、「ざくろ」「女子大生・曲愛玲」「いろ」「聖衣」の五篇。(秋山駿)
近親相姦の夢とさまざまな倒錯の図柄、夫の不能とそのあとにくる彼女の神経障害、意図せずに演じた街娼の役割。男との遍歴を通じて精神と官能を追求した長篇。(川村二郎)
つぎつぎとあでやかに展開する色模様の楽しさ。さらに、情熱が燃えつきたあとの充実感と虚しさが入りまじる複雑な味わいがかもし出されるエンタテインメントの傑作。(亀井秀雄)
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