電子書籍

孤独な祝祭 佐々木忠次

バレエとオペラで世界と闘った日本人

価格:※各書店サイトで確認してください
発売日2016年11月04日
ジャンルノンフィクション

ベジャール、ギエム、ドミンゴも敬愛

「諦めるな、逃げるな、媚びるな」
──こんな日本人がいた──
極東の島国から「本丸」バレエの殿堂、パリ・オペラ座に討ち入り。
偏見と嘲笑は一夜にして喝采へと変わった。
誰もが不可能と信じていたことを、執念の交渉で次々現実にしてきたタフネゴシエーターは、2016年4月30日、一人ひっそりとこの世を去った。

それは半世紀前、まだ日本が貧しく、西洋のオペラなど夢のまた夢、胴長短足の日本人はバレエには向かないとされた時代。無謀な夢を抱いた一人の若者がいた。
のちに日本で初めてミラノ・スカラ座の引越し公演を実現させ、鬼才モーリス・ベジャールに不朽の名作「ザ・カブキ」をつくらせ、世界各国の名門オペラハウスに自らのバレエ団を率いて乗り込むことになる、その青年の名は佐々木忠次。
日本のオペラ・バレエブームを牽引、カルロス・クライバー、ジョルジュ・ドン、シルヴィ・ギエム……佐々木が日本に招いた伝説のスターたちは、日本人を熱狂させ、劇場を祝祭空間に変えた。

日本人の体系的な弱点を日本人ならではの統一美で勝負することで克服。敗戦国の島国から来たおかしな東洋人と冷たい視線を浴び、日本の官僚の無理解に苦しみながら、各界の大物と一歩もひかずに徒手空拳で直談判。
ついに「THE TOKYO BALLET」は、20年間外部の団体の公演を許可してこなかった、世界中のダンサーが憧れるバレエの聖地、パリ・オペラ座をも制覇。
そして、16年間にわたる執念の交渉の末、誰もが「不可能」と口を揃えたミラノ・スカラ座、ドミンゴ×クライバー「オテロ」の幕が日本で開く。

しかし、「美」と「本物」への激しい渇望は、同時に己を焼く業火となった──。
過剰な情熱が巻き起こす周囲との軋轢、美意識をめぐる衝突、盟友との訣別……。
劇場に生きた男の孤独な闘い。その誰も知ることのなかった舞台裏が、徹底取材により、今、明らかになる。

目次

序章 東京バレエ団、パリ・オペラ座の舞台を踏む
人が熱狂し、陶酔する祝祭空間を

第一章 目黒の美の殿堂

第二章 現実に絶望、虚構にのめり込む
少年が見た群青色の虚構の星空

第三章 舞台監督という仕事
豚の膀胱を探せ!/裸で舞台に出たいと訴えた三島由紀夫/虚と実をめぐる美意識の衝突

第四章 東京バレエ団誕生 放浪バレエ団からの出発
「白鳥の湖」で犬が吠える/三十二歳の東洋人、初の来日交渉に挑む/日本人ならではの統一美で勝負する/「鉄のカーテン」の国へ/シャンゼリゼへ打って出る/意地悪な記者の質問/日本大使館の無理解

第五章 TOKYO BALLETが世界を行く
携帯コンロで自炊/カルロス・暗いバーを日本に!/王室も続々観劇へ/爆破予告/絶望的な電話/KGBの訪問

第六章 ミラノ・スカラ座への道 ベジャールの時代
十六年、執念の交渉「諦めるな、逃げるな、媚びるな」/「やはり『オテロ』は出来ない」/ドミンゴとスカラ座の喧嘩/不可能を可能にする/誰もがササキさんを正気と思わなかった/ベジャールの時代/パリ・オペラ座の夕陽の中で四十七士、切腹す/ジョルジュ・ドンの死

第七章 怒りの人
振付は魂と魂の行為だ!/新国立劇場への怒り/小学生の子どものような一面/ルグリ、マラーホフ、ギエム/祝祭を求めた人/ベジャールとの別れ/ヴェルサイユ、奇跡の祝祭/初めて見せた涙/エンジンなしで飛行機を飛ばし続けた男

あとがき

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担当編集者より

佐々木忠次──オペラ・バレエファンの間ではササチューの愛称で(時に若干の揶揄もこめて)親しまれていましたが、一般の知名度はそれほど高くないでしょう。しかし、戦後日本の日本興行史はこの人抜きに語ることは出来ません。豪腕、不遜かつ繊細、淋しがり屋で味方も敵も誰よりも多い人でした。取材中の2016年春のある日、携帯への電話で佐々木さんの死を知りました。佐々木さんの執念が乗り移ったような熱量ある評伝の完成です。

著者

追分 日出子

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