●宇宙の謎は、宇宙を作って解き明かす●
この宇宙はいかにして誕生したのか?
アインシュタイン以降、世界中の宇宙物理学者がその難問に挑んできた。
相対性理論、量子論、ビッグバン理論……。
それらすべてを駆使して、「宇宙論の三大問題」を軒並み解決する
「インフレーション理論」が誕生し、宇宙の起源を巡る旅は大きな進歩を遂げた。
だが、そのとき、思わぬ研究の扉が開いた。
「これまでの知識を組み合わせれば、人間自ら宇宙を作り出すことも可能では?」
その研究に先鋭的な科学者たちが引き寄せられ、
やがて一人の日本人研究者が、最後のピースを埋めた――。
【目次】
■第一章 ビッグバンの残像という手がかり
人間の手で宇宙を創造し、宇宙誕生の謎を解き明かす。そんな研究に取り組む科学者た
ちがいる。だがそれが本当に可能なら、この宇宙もまた、何者かによって作られた可能
性があるのでは? その答えは「宇宙マイクロ波背景放射」の中にあるかもしれない。
■第二章 空間と時間を取り去っても、そこには量子が残る
十九世紀に確立された古典物理学に対し、〝不確定性〟という反旗を翻した量子力学の
世界。一個の光子が二つのスリットを同時にすり抜け、「量子トンネル効果」で物体が
瞬間移動する。実験室で宇宙を作るには、量子の世界が持つそんな奇妙な力が必要だ。
■第三章 何が宇宙を膨張させたのか?
宇宙は誕生直後に激烈な膨張を始め、光速を超える速さで空間を広げたとする「インフ
レーション理論」は、宇宙論の三大問題を軒並み解決し、研究者に衝撃を与えた。その
提唱者グースが目をつけたのは、「過冷却」と「偽の真空」というアイディアだった。
■第四章 新インフレーション理論の幕開け
グースのインフレーション理論にはある欠陥があった。このモデルには初期宇宙を指数
関数的に膨張させたインフレーションを終わらせる方法がないという問題だ。いち早く
その欠陥に気づいたリンデは、宇宙を小さく分割するという発想でその難問に挑んだ。
■第五章 宇宙のはじまりは「無」だったのか?
ソ連で生まれ育ったビレンキンが発表した論文は、時空も物質もない「無の世界」から
でも宇宙が生まれうることを示す驚くべき内容だった。さらに彼は、この宇宙は無数の
泡のひとつにすぎず、唯一の存在ではないと論じた。それはいったいどういうことか?
■第六章 粒子加速器で生まれ、ワームホールでつながる
「無」から宇宙が作れるのであれば、「有」から作ることはいよいよ現実的になる。大型
ハドロン衝突型加速器の中でなら、それが可能かもしれない。だが、この宇宙の内部に、
急速に膨張する新たな宇宙を創造しても、わたしたちは無事でいられるのだろうか?
■第七章 ひも理論が導く無数の平行宇宙
なぜ宇宙の様々なパラメータは、人間が存在するために都合の良い値になっているのか。
ポルチンスキーはその謎を解くため、宇宙を十次元とするひも理論をインフレーション
理論に結びつけた。すると浮かび上がったのは、衝撃的なマルチバースの世界だった。
■第八章 宇宙の種「磁気単極子」を捕まえる
宇宙創造のための最後のピース。それを埋めたのは日本の研究者だった。坂井伸之は
「リトルバン理論」により、加速器で宇宙を作るレシピを書き上げた。残された課題は、
彼が示した宇宙の種「磁気単極子」を見つけることだ。探索はもう始まっている。
■第九章 ベビーユニバースに手紙を送る方法
粒子加速器で新たな宇宙を作れたとしても、外から見る限り、それはミニブラックホー
ルにしか見えないとされる。では、わたしたちはそれを正しく観測できるのか。また、
そのベビーユニバースと交信することは可能なのか。宇宙創造のその後を考えてみよう。
■第十章 わたしたちは宇宙を創造するべきなのか?
本書では実験室で宇宙を作ることは可能か、あらゆる面から検討してきた。そしてその
驚くべき研究が現実的な段階に入りつつあることを知った。最後に、そこに潜む倫理的
な問題と向き合おう。わたしたちは新たな宇宙に対し、どんな責任を負うべきなのか?
■謝辞/ソースノート/訳者あとがき
■解説 坂井伸之(山口大学大学院創成科学研究科教授)
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