電子書籍

病葉草紙

価格:※各書店サイトで確認してください
発売日2024年08月07日
ジャンル歴史・時代小説

これは――虫ですね。本草学者が捉えた真相

人の心は分かりませんが、 それは虫ですね――。

ときは江戸の中頃、薬種問屋の隠居の子として生まれた藤介は、父が建てた長屋を差配しながら茫洋と暮らしていた。八丁堀にほど近い長屋は治安も悪くなく、店子たちの身持ちも悪くない。ただ、店子の一人、久瀬棠庵は働くどころか家から出ない。年がら年中、夏でも冬でも、ずっと引き籠もっている。

「居るかい」

藤介がたびたび棠庵のもとを訪れるのは、生きてるかどうか確かめるため。そして、長屋のまわりで起こった奇怪な出来事について話すためだった。

祖父の死骸のそばで「私が殺した」と繰り返す孫娘(「馬癇」)、急に妻に近づかなくなり、日に日に衰えていく左官職人(「気癪」)、高級料亭で酒宴を催したあと死んだ四人の男(「脾臓虫」)、子を産めなくなる鍼を打たねば死ぬと言われた武家の娘(「鬼胎」)……

「虫のせいですね」
棠庵の「診断」で事態は動き出す。

「前巷説百物語」に登場する本草学者・久瀬棠庵の若き日を切り取る連作奇譚集。

目次

病葉草紙 目録

馬癇
気癪
脾臓虫
蟯虫
鬼胎
脹満
肺積
頓死肝虫

担当編集者より

舞台は江戸の八丁堀にほど近い貧乏長屋。この長屋に引きこもっているのが、若き日の本草学者・久瀬棠庵です。
大家の藤介に、棠庵が物の本を開きつつ解説するのは、「馬癇」「脾臓虫」「鬼胎」「頓死肝虫」など、なんらかの身体症状を引き起こす、いわゆる「腹の虫」。これらの虫が、長屋の周辺で起こった事件と不思議に結びつき、意外な方向に展開していきます。
棠庵と善良な大家、藤介とのやりとりは基本的に軽妙で楽しく読めますが、最終話で棠庵が自身について語る言葉には胸をうたれます。「人の心は分からない」と呟き、飄々と諦観をもって生きているように見えていた若き棠庵の隠れた内面が垣間見えるのは、藤介とこれまで育んできた関係があるからこそと思わされます。
久瀬棠庵を通して『前巷説百物語』前日譚としても読めますが、一冊で完結しているため、京極夏彦さんの作品を初めて読む方にもおすすめ。夏の夜に楽しみたい奇怪な連作短編集です。

著者

京極 夏彦

1963年生まれ。北海道小樽市出身。日本推理作家協会監事。世界妖怪協会・お化け友の会代表代行。
94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年、『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞長編部門、97年、『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2000年、桑沢賞受賞。03年、『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年、『後巷説百物語』で直木賞、11年、『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、16年、遠野文化賞、19年、埼玉文化賞受賞。22年、『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。
他の著書に「百鬼夜行シリーズ」「ルー=ガルーシリーズ」など多数。

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