イギリス最古の文学賞
ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞
受賞作品
刮目せよ、これは暴動と叛乱の文学である。
グレート・ブリテン、84年――大英帝国は内戦の瀬戸際にあった。
1984年。サッチャー首相率いるイギリス政府は一方的に炭鉱の閉鎖を決定した。これにより失職する労働者は二万人。これは宣戦布告だった。
炭鉱労働者の組合NUMのトップ、アーサー・スカーギルは告げた――
我らの生活を守るため、ストライキを実行せよと。
だがストライキは収入の途絶を意味する。困窮する労働者たちのために、組合の中枢にいあるテリー・ウィンターズは奔走する。だがウィンターズには秘密があった。彼は同志を裏切っていたのだ。
ニール・フォンテインは始末屋だ。サッチャーの意をうけてストを潰すために暗躍する〈ユダヤ人〉の腹心だ。ニールは権力者たちの密談に耳を傾け、権力と手を組んで、労働者たちを潰してゆく。
〈修理工〉ことデイヴィッド・ジョンソンは雇われの暴力者だ。だがお偉方の腰巾着どもが卑劣な手段で彼を脅し、スト潰しの汚れ仕事を強制する。
そして政治と警察と労働運動の策謀が衝突し、軋みを上げる中、ストライキに身を捧げる労働者たちは困窮してゆく――盗聴器がカチ・カチと音を立て、警官たちがガチャ・ガチャと装備を鳴らし、労働者たちを追いつめる。棍棒を振り下ろす。国家が監視し、脅迫し、暴力をふるい、叛乱の芽を踏みにじる。現代犯罪文学の旗手デイヴィッド・ピースが国家の暴力を描き尽くす。
ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞――ウィリアム・ゴールディングやクッツェーといったノーベル文学賞受賞者も輩出、マキューアン、マッカーシー、フランゼン、ゼイディー・スミスらも受賞者に名を連ねる。『GB84』は2004年度の受賞作。84年の炭鉱ストライキをモチーフに、強者の残忍な策謀と、弱者の悲痛な叫びをデイヴィッド・ピースは刻みつける。原稿用紙換算1500枚、圧巻の60万字。この巨体に充満するのはパンキッシュな怒りであり、言葉で世界を転覆せんとする意志だ――ノワールとは文学によるテロリズム、言葉による叛乱なのである。ジェイムズ・エルロイ『アメリカン・デス・トリップ』、馳星周『煉獄の使徒』に匹敵する暗黒の全体小説。
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