激動の昭和史を貫く精神とは。日本人にとって、天皇とは、そして昭和とは何であったのか―さまざまな思いをこめて同時代の精神を綴った著者会心の評論集。
先帝(昭和天皇)の「御不例」の報道から「崩御」に際し、実に多くの日本人が皇居前につめかけ、心からの天皇への尊敬の心を表明した。それは著者にとって感動的な光景だったが、片や、その姿を報じるマスコミには、不思議な戸惑いが見られた。自分たちがいままで宣伝してきた「戦後民主主義」「象徴天皇制」の理念からすれば、グロテスクな光景に見えたからだ。「新憲法」のもと、天皇という存在を忘れられた存在として棚上げしてきた宣伝は、一体どうなったのか。まるで海底から巨大な白鯨が現れたような「天皇という存在を必要とする国民の姿」は、マスコミ・知識人たちが隠そうとしても隠しきれない現実だ、と著者は論じる。
占領軍によって作られた新憲法は、象徴天皇は、共和政体の頭に載せられた羽飾りのような扱いを受けている。にもかかわらず、尊厳ある天皇の存在がこの憲法の中にあっていかに重要な役割を果たしていたか、昭和から平成に変わる際に日本人のあいだに立ち現れた
強烈な感情によって表明されているのだ。
保守論客として時代を担ってきた著者が、昭和という時代に天皇が担ってきた役割を、ときに熱く論じ、「戦後民主主義」の欺瞞を鋭く突いた評論集。
まさに平成から次の年号に切り替わる5月、「象徴天皇制」はどう存在してきたか、これからどうあるべきかを日本人が改めて考える時期となる。天皇の存在を誰よりも愛してきた著者の論は、大きな助言になるだろう。「新編」にあたり、元本から宰相論2編を除き、平成の2編「福沢諭吉の『帝室論』」「二つの震災と日本の姿」を追加する。
まえがき(御大喪に参列して)
第一部 崩御、その哀しみ
・国、滅ぼし給うことなかれ
・遺された欺瞞
第二部 御不例、その不安
・激動の昭和史から
・意義深い新年を迎えて
・「昭和」の時代の理想実現を
・四十三年目のあの日迎えて
・フランスの知識人の言葉
・皇統維持に献身された先帝
・戦後にも侵されぬもの
・字余りのお歌
・時代の終り
*
・政党政治と聖賢の治
第三部 視点、そのあとを望んで(対談)
・昭和天皇とその時代(井尻千男)
・国と王統と民族と(市村真一)
・昭和史を貫くお心(大原康男)
第四部 「平成」への問いかけ
・福沢諭吉の「帝室論」
・二つの震災と日本の姿
・解説 「崇拝」と「諫言」と
――振幅のある皇室観 平山周吉
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