担当編集者より

直木賞候補となったほか、「本の雑誌」2021年上半期ベスト１位になるなど話題となった『高瀬庄左衛門御留書』、山本周五郎賞を受賞した『黛家の兄弟』と、作品を発表する度に注目を集めている新進時代小説作家、それが砂原浩太朗さんです。
なによりも評価されているのは、その洗練された筆捌き。特に、緻密に描き込まれた情景描写は折り紙付きで、遥か昔の、我々が直接は知らないはずの江戸時代の息吹を確かに感じさせてくれます。
そんな砂原さんが本作で描いたのは、江戸藩邸の「差配役」という架空のお役目（差配役とは言ってみれば、会社の総務部総務課のようなもの）。陰で“なんでも屋”と揶揄されている主人公・里村五郎兵衛の元には、大小問わず様々な揉め事が持ち込まれ、大わらわの毎日です。若君が行方不明になったかと思えば、今度は藩主の正室の愛猫が見つからない……。次々と現れる難題を里村はいかに解決に導くのか⁉　これまでの砂原作品で最も身近（？）とも言える今作。これまで以上に見事な筆捌きと共に、楽しんでいただけると嬉しいです。