健康診断は受けてはいけない

814 (税込)
発売日2017年02月17日
ジャンルノンフィクション
商品情報
書名(カナ) ケンコウシンダンハウケテハイケナイ
ページ数 224ページ
判型・造本・装丁 新書判
初版奥付日 2017年02月20日
ISBN 978-4-16-661117-1
Cコード 0247

「健診大国ニッポン」の大いなる過ち

健診はこんなに危険! 欧米に職場健診も人間ドックも存在しないのはなぜか? 日本の男性は職場健診で寿命を縮めている!?
日本人の多くは「健康」のため職場健診や人間ドックを受診していますが、欧米には存在しません。「より健康になる」とか「寿命をのばす」という効果を証明するデータがないからです。著者の近藤誠さん本人も、慶大病院で在職した40年間、執行部から強い圧力がありながらも、一度も受けませんでした。検診は有効というデータがないからです。にもかかわらず、日本では、医学的な根拠がないままに、1972年の「労働安全衛生法」で健診が義務化され、今日に至っているのです。日本の平均寿命は世界のトップクラスですが、奇妙なのは、男女間で平均寿命に6歳もの差があることです。女性よりも職場で健診機会の多い日本の男性は、まさに「健診で寿命を縮めている」可能性があるのです。
検診は危険がいっぱいです。そもそもCTや胃エックス線撮影には放射性被ばくによる発がんリスク、子宮がん検診には流産や不妊症のリスクがあります。異常値が見つかった後に行なわれる肺や前立腺の「生検」も極めて危険です。手術後に「がんではなかった、おめでとう」と平然と述べる医者もいます。
さらに危険なのは、「過剰な検診」が、過剰な薬の処方や手術など「過剰な治療」につながるからです。人間ドックには「早く見つけるほど、早く死にやすい」という逆説があります。実際、中村勘三郎さんや川島なお美さんは、人間ドックで「がんを早期発見され、早期に亡くなってしまった」のです。
「検査値より自分のからだを信じる」こそ、健康の秘訣です。健康な時に、健診など受けるものではありません。
本書は、さまざまなデータや論文に基づき、「健康診断が有害無益である」ことを徹底的に明らかにします。

目次

■はじめに――効果を示すデータがないから四〇年間受けなかった

■第1章 健診を受ける人と受けない人
・健診を受ける人と受けない人、どちらが長生き?
・治療を受ける人と受けない人、どちらが長生き?
・全がん(胃がん、肝がん)の死亡率は低下
・「過剰診断→過剰治療」という悪夢
・甲状腺がん――韓国で起きた過剰診断の悲劇
・肺がん――検診群の死亡率が上昇
・チェコでの比較試験――欧米は肺がん検診を実施せず

■第2章 がん検診の効果を検証する
・胃がん検診――日本は義務化、欧米は実施せず
・前立腺がん検診――「おもしろいようにがんが見つかる」
・乳がん検診――スイスはマンモ検診を廃止
・子宮がん検診――義務化で死亡率が上昇
・卵巣がん検診――効果は証明されず
・大腸がん検診――論文のカラクリ
・内視鏡における胃がん検診――早期発見で死亡率が上昇
・内視鏡による大腸がん検診――ポリープの発見・切除は無意味

■第3章 健診のデメリット
・かならず生じるデメリット
・検診での放射線被ばく――CTや胃エックス線撮影の発がんリスク
・女性特有のデメリット
・子宮がん検診による不妊症のリスク
・”生検”は危険がいっぱい
・がんと診断された場合のデメリット――精神的ショックと失職のおそれ
・肉体的なデメリット――手術後に「がんではなかった、おめでとう」

■第4章 どれほど死者が増えるのか?
・胃がん集団検診を廃止した長野県泰阜村
・手術で亡くなっても「がん死」に
・手術でがん細胞が増殖する
・早く見つけるほど、早く死にやすい――人間ドックの逆説
・抗がん剤は「クスリ」ではなく「毒」
・子宮頸がん――検診奨励で若年層の発見数と死亡数が増加
・前立腺がん――極めて危険な手術
・乳がん――発見数も死亡数も増加

■第5章 がん検診に救命効果がない理由
・「転移するがん」と「転移しないがん」
・乳がん治療の歴史
・「今は転移しなくとも、放置すれば転移するがん」は存在しない
・「がんもどき」とは?
・「潜在がん」は放置すればよい――前立腺がん、甲状腺がん、乳がん
・「だんだん癌の範囲が拡がってくるんですね」――恣意的に拡大された「がん」の定義
・日本では「早期がん」も、欧米ではほとんど「良性病変」
・ピロリ菌除去の際に感染症を「がん」と診断
・「発症しない早期がん」、「消えるがん」
・増大せず、消えてしまう「浸潤がん」も
・「転移するがん」は発見前にすでに転移
・転移の有無を決めるがん幹細胞

■第6章 検査値の異常
・日本人はクスリ漬け――六〇代の三割以上、七〇歳以上の五割以上が服用
・異常値とは――五%を自動的に「異常値」扱い
・高血圧のウソ――基準値切り下げで降圧剤の売上が年間一兆円超に
・高血糖のウソ――血糖降下剤で死亡率が上昇
・高コレステロール血症、脂質異常症のウソ――「異常高値」の方が死亡率が低い
・フィンランドでの比較試験――生活習慣病への生活指導とクスリ処方で総死亡数は増加

■第7章 新たな健診
・メタボ検診のウソ――BMI二五~二七の「肥満男性」の死亡率が最も低い
・CT・PETによる検診のウソ――CT受診者の半数が、がんでもないのに「異常アリ」
・ピロリ菌検査のウソ――ピロリ菌除去で食道がんのリスク
・脳ドック(MRI)のウソ――欧米には存在しない
・骨粗しょう症のウソ――診断根拠が曖昧でクスリも劇薬

■第8章 温故知新――検査機器とクスリに頼る日本の医者
・日本に多いテンプラ医者
・テンプラ医者が増えた理由――戦争と国民皆保険
・医学部の激増とテンプラ医者の拡大再生産
・クスリと検査ばかりに頼るテンプラ医者
・比較試験を重視する欧米――健診も無意味と判断
・効果が不明な人間ドック
・健診を推進する厚労省と専門家
・厚労省と検査業界の利権
・検査は医師の収入源
「成人病→生活習慣病」という呼称変更で莫大な利益
・医師たちは健診の有効性を信じているのか?

■第9章 検診を宣伝する者たち
・がん検診の宣伝で駆使されるレトリック
・エビデンス無視の推奨
・「ケンシン女子」のススメ
・データ扱いのインチキ
・”権威中の権威”による推奨
・「科学的反論」は本当に科学的か?
・がん検診を宣伝する医師たちの共通点
・がん検診を推奨するマスコミの罪――大本営発表の現代版
・著名人によるがん検診の推奨
・影響力が絶大な「がん体験者」による推奨
・無知にもとづく「善意」ほどタチが悪い

■第10章 ではどうするか?
・健康なときに検査は受けない
・職場健診の強制にどう対処するか?
・検査で病名をつけられたらどうするか?
・まずクスリの危険性を認識せよ
・降圧剤もやめられる
・断薬の三つの方法
・玄米菜食、肉食制限、糖質制限で死亡率は高まる
・百歳長寿者は、肉や魚をたっぷり摂取
・「検査値より自分のからだを信じる」が健康の秘訣
・検査値はからだが完璧に調整した結果
・健診がつくりだす”虚病”
・日本の医療は「不安産業」
・医者と科学技術が築き上げた壮大な虚構

担当編集者より

職場や自治体での「健康診断」や「人間ドック」を受診している方は、それを「自身の健康のため」と受けとめているはずです。ところが、近藤誠さんがさまざまな比較試験や統計データを丹念に調べて明らかにしたのは、「健康診断は、健康の維持・増進には役立っておらず、実態として、むしろ過剰な医療介入のきっかけとなり、結果的に、死亡率を高め、寿命を縮めている」という衝撃的な事実です。そもそも欧米には、職場健診も人間ドックも存在しません。「健診大国・ニッポン」の大いなる誤謬を明らかにする書です。

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