作品紹介

「婆娑羅」という言葉をご存じでしょうか。室町時代初期に上級武士の間で猖獗を極めた乱暴な行動様式のことで、戦国末期に流行った「傾奇」の先輩と考えるとわかりやすいでしょう。この婆娑羅の代表が、本書の主人公、佐々木(京極)道誉です。『太平記』の中で、楠木正成と並んでもっとも魅力的に描かれるこの男の生涯を通じて、日本人の美意識、出処進退の源流に迫ろうというのが本書の目的です。
 なぜ美意識か。現代で「道」とつく芸術、たとえば茶道や香道、花道といったものの源流は、すべてこの男にあるからです。花道では池坊専慶が花道書を記す200年以上も前に、道誉はそれを書き残しています。
 また、婆娑羅は「乱暴狼藉」と同意語のように思われていますが、さにあらず。意のままに振舞っても、そこに確固たる美意識があれば、それは狼藉ではなく、「道」に通じる。ここに筆者の「男の生き方の理想」すなわち「自由」の境地を道誉で示そうという目論見があります。後半では、婆娑羅の後継者ではあるが、どんどん矮小化されていった傾奇者、さらに三島由紀夫の自決の美意識も取り上げ、「見事に死ぬこと」しか男ぶりを示すことができなくなった時代の悲哀にも迫ります。
 ゲーム「戦国BASARA」などの影響で、BASARAもしくはバサラという言葉は今の若い人たちにも親しみがあるようですが、本物の婆娑羅を楽しんでみてください。 

担当編集者より
NHK大河ドラマ「太平記」では、佐々木道誉役を陣内孝則さんが演じていました。歴史漫画などでは、坊主頭のいかにも悪そうな老人といった描かれ方が多かったので、陣内道誉は新鮮でしたが、本書を読むと、案外そのほうが実物と近かったのかもしれないと思いました。歌道に堪能で、花道、香道、茶道は〝祖〟といっていい大教養人でありながら、門跡寺院である妙心寺を焼討するなど、乱暴といえばこれほど乱暴な男もいない。もちろん近江の守護大名として戦闘力も抜群です。一時、傾奇者・前田慶次が大人気でしたが、傾奇は婆娑羅の矮小化した後継者でしかありません。〝漢(おとこ)〟の真打登場です。
目次
はじめに 名物道誉一文字

第一章 佐々木氏の出自と家職、そして若き日の道誉
    宇多源氏/清和源氏頼朝に従う/道誉の誕生/若き日の道誉
      /足利尊氏の登場

第二章 動乱の時代――両統迭立と三種の神器
      両統迭立とは何か/英邁なる尊治親王/文保の御和談
      /元弘の乱から建武の中興へ/朕の新儀は未来の先例
      /三種の神器/オリジナルと形代/後鳥羽院御番鍛冶
      /後醍醐天皇と足利尊氏/皇位と神器

第三章 婆娑羅――その実相と文化人道誉
      二条河原落書と建武式目

 一 妙法院焼討
      猿の皮の腰当に鶯籠を手に持って/佐々木氏と叡山の角逐
      /道誉の宥免
 二 立花
      道の藝術/道誉の花伝書/道誉政敵の裏をかく
 三 聞香
      香木の渡来/道誉所持百八十種名香
 四 連歌
      菟玖波集/遠山の霞/雉子と鷹
 五 能狂言
      橋勧進
 六 茶寄合
      闘茶
 七 楠木正儀と道誉
      道誉の屋敷では
 八 大原野の大饗宴
      管領斯波高経
 九 肖像自賛と道誉の死
      道誉の戦

第四章 婆娑羅から傾奇へ――変容と頽廢
      武者の時代/天下三槍/傾奇者前田慶次/友田金平の槍
      /生き過ぎたりや二十五/水野十郎左衛門

第五章 根源的主体性と自由狼藉の間
      「自由」の意味/土岐頼遠の狼藉/高師直
      /婆娑羅と忠誠心/『太平記』二人のスター
      /婆娑羅とダンディズム

あとがき

主要参考文献 

佐々木道誉略年譜と関連事項

商品情報
書名(カナ) バサラダイミョウ ササキドウヨ
ページ数 208ページ
判型・造本・装丁 新書判
初版奥付日 2021年04月20日
ISBN 978-4-16-661310-6
Cコード 0295

著者

寺田 英視

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