昨年、初めて行なわれた高校生直木賞の全国大会。今年もGWの中日、5月5日に全国より12校の高校生が一堂に会した。
過去1年間の直木賞候補作の中から、高校生が自分たちにとっての一冊を独自で決める試みだが、2回目となる今回、いくつか変わった点がある。
まずは、昨年は小説誌「オール讀物」の一企画として全国4校の学生が集まって開催されたが、思った以上の反響があり、今後も長くこの試みを続けていきたいということから、新たに高校生直木賞実行委員会を立ち上げたこと。元々この活動を提唱し、昨年も協力していただいた明治大学文学部准教授の伊藤氏貴さんを代表に、文藝春秋は委員会を後援していくという形をとることになった。
公式サイトを開設するとともに、 雑誌に広告を打つなど、参加校も全国より公募。また、この主旨に賛同していただいた企業には賛助会員として援助いただき、本代や選考会当日の交通費、宿泊費などの経費にあてさせていただくことにした。
今回の参加校は、市立函館高等学校、岩手県立盛岡第四高等学校、宮城県仙台第二高等学校、千葉県立鎌ヶ谷高等学校、麻布高等学校、都立南多摩中等教育学校、神奈川県立平塚江南高等学校、向上高等学校、静岡県立磐田南高等学校、大阪薫英女学院高等学校、明治学園高等学校、筑紫女学園高等学校の12校。
これをまず6校ずつに分け、昨年同様、事前に第151回と第152回直木賞の候補作をそれぞれに読んでもらい、上位に選ばれた作品の中から下記の最終候補作を決定。この5作品について再度、各校で討議をしてもらった。
木下昌輝『宇喜多の捨て嫁』(文藝春秋)
西加奈子『サラバ!』上下(小学館)
万城目学『悟浄出立』(新潮社)
柚木麻子『本屋さんのダイアナ』(新潮社)
米澤穂信『満願』(新潮社)
全国大会には各校より代表1名が参加。12名(男子2名、女子10名)による議論は冒頭から活発にやり取りされ、昨年を上回る熱気に包まれた。
最終的に木下さんと西さんの作品に絞られ、さらに白熱した討議は約3時間半に及び、木下昌輝さんの『宇喜多の捨て嫁』が選ばれた。
昨年の伊東潤さんの『巨鯨の海』に続いて、今年も時代小説に決まった。意外に思われる方もいるかもしれないが、歴史上の人物に新たな見方を示してくれたこと、また、怖いくらいの臭いの表現をはじめ、木下さんの筆致の新しさなどにも評価が集まった。
事前にリリースを流していたこともあり、当日は新聞社など6社のメディアが駆けつけ、選考会後に高校生たちを取材。関心の高さがうかがわれた。
参加してくれた高校生たちは、決して文芸部など読書通の学生ばかりではない。あらためて、まだまだ自分の読解力が足りないと反省する弁なども聞かれたが、それぞれ自らの感想を述べ、また他校の学生の評価を聞き、有意義に話し合う時間を持てた彼らの表情は皆、充実感に満ち溢れていた。
来年以降もまた、是非この取り組みを続けていきたい。
選考会の詳しい模様は、6月22日発売のオール讀物7月号にて掲載します。
「高校生直木賞」賛助会員
・株式会社SRJ
・王子製紙株式会社
・株式会社くまざわ書店
・国際紙パルプ商事株式会社
・株式会社三省堂書店
・社団法人全国出版協会
・大日本印刷株式会社
・株式会社竹中工務店
・凸版印刷株式会社
・日本紙パルプ商事株式会社
・日本出版販売株式会社
・日本製紙株式会社
・株式会社博報堂
・株式会社丸善ジュンク堂書店
・三菱地所株式会社
・株式会社ミライト・ホールディングス
・株式会社有隣堂