逢坂冬馬さん『同志少女よ、敵を撃て』第9回高校生直木賞受賞インタビュー

高校生直木賞

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逢坂冬馬さん『同志少女よ、敵を撃て』第9回高校生直木賞受賞インタビュー

文: 「オール讀物」編集部

デビュー作にして直木賞候補、本屋大賞受賞となった『同志少女よ、敵を撃て』が高校生直木賞を受賞! 受賞の感想や本選びのコツ、高校生へのメッセージを逢坂さんに伺いました。


『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂 冬馬/早川書房)

――ご受賞、おめでとうございます。

 高校生直木賞についてはノミネートのメールで初めて詳しく知ったのですが、年2回ある直木賞の受賞作と候補作の中から絞り込んで候補を決め、高校生が自分たちで受賞作を選ぶんですよね。まずその候補に残れただけで心強いことだなと思いましたし、若者が自主的に選ぶことにすごく意義があるので、どういう風に論じられるかが楽しみでした。

 4時間半もかけて真剣に討議した結果、「自分たちにとっての優れた小説」として『同志少女よ、敵を撃て』を選んで下さったことが率直に嬉しいです。受賞をきっかけに読んでくれる若者が増えたら、さらに嬉しいですね。

『同志少女よ、敵を撃て』の刊行は2021年11月。直木賞選考会は22年1月で、本屋大賞の投票締め切りは2月末でした。つまり、2月24日にロシアがウクライナでの軍事作戦開始を宣言した後にこの作品について論じたのは、事実上、本賞選考に参加した高校生たちが初めてなんです。時事的なものになってしまった作品を論じるのも、議論をさらに難しくして大変だったのではないでしょうか。

――本を選ぶ時のコツを教えてください。

 いま戦争が起きているとなれば不安ですし、もっと知りたいと考える方も多いと思います。ところが、時事、特に国際問題について学ぼうと開いた本で思わぬ憎悪にぶつかって驚くこともありますし、何を読むかが難しい。僕自身は“あまりホットなものを選ばない”ことを心がけています。

 例えば開戦後にウクライナやロシアに関する本はたくさん出ましたが、どうしても玉石混交になる。それよりは、ソ連崩壊後に出たロシアの通史などを読むほうが、得るものが多いと思います。学術書や教養書は検証を経る必要があるので、刊行からある程度時間が経って評価の定まった本を読むことをおすすめします。

 玉石混交から「玉」を選ぶには、高校生の皆さんならば司書さんに聞くのが一番です。図書館のリファレンスサービスも充実していて、僕は都立図書館のオンライン申込をよく利用しますが、他の自治体にも同じようなサービスがあると思います。
東京都立図書館 https://www.library.metro.tokyo.lg.jp/search/service/reference/illustration/index.html

逢坂冬馬さん

――高校生へのメッセージをお願いします。

「オール讀物」のエッセイにも書いたとおり、僕はあまり本を読まない高校生でした。だから、まず6冊もの小説に真剣に向き合えることが立派な姿勢だと思いますし、読書でもそれ以外の何かでもひとつの物事に関してそこまで打ち込むことは非常に良い思い出になるはずです。

 高校生直木賞には部活や委員会に限らず、学校内の有志で集まって参加することもできると聞きました。その気軽さ、オープンさも良いですね。今回参加された皆さんほどの情熱を傾けていたら、自然と読書を好きになると思いますし、これからも参加校がどんどん増えてほしいです。


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