作品
慶長元年春、ボロをまとった二十数人が長崎で磔にされるため引き立てられていった。歴史に材を得て人間の生を見すえた力作。「三色旗」「コロリ」「動く牙」「洋船建造」収録。(曾根博義)
一八四八年、鎖国中の日本に憧れ、単身渡来した風変りなアメリカ人と、その周辺を通して、開国に至る意外な史実を描いた歴史長篇
作家はいかに素材を発見し、いかなる取材によってそれに迫り、発酵させ、作品を完成させてゆくのか。小説には書かれなかったエピソードを多数披露した小説の裏側。(沢木耕太郎)
起工からフィリピン沖で沈むまでの六年間、国民から遮蔽され続けた幻の巨艦の運命に戦争の本質を見る著者の視線。生存者から得た貴重な証言で綴る記録文学。(本田靖春)
心臓移植手術は生命の神秘に対する現代医学の挑戦であった。今世紀初頭以来、世界の外科医が試みた多くの手術とそれにまつわる人間のドラマを描くドキュメンタリー・ノベル。
その模型“飛行器”はフワリと宙に浮かんだ。ライト兄弟が飛行機を飛ばす十数年前、独自に考案した男が日本の片隅にいた。二宮忠八の苦闘の生涯を描く長篇。(鶴岡冬一)
昭和十九年、フィリピン海域で飛行艇二機が遭難した。連合艦隊司令長機は行方不明、参謀長機は敵の手に。参謀長の機密書類は? 他に「海軍甲事件」「八人の戦犯」「シンデモラッパヲ」収録。
沈没後九年で瀬戸内海から引揚げられた悲劇の潜水艦イ33の一室から、“生けるが如き”十一の遺体が発見された。表題作のほか、「烏の浜」「海の棺」「剃刀」「手首の記憶」を収める。
当年四十二歳、中年の花盛りといいたいが、女房と子供には無視され、メシすら満足に食わせてもらえない。これでは家出したくなるのも当然。そこに現れたのが男のパラダイスだった。
軍用機をバラせ――男の言葉に若い整備兵は蒼ざめた。戦局日に日に不利な海軍航空隊で苛酷な毎日を過ごす彼は、飛行機を爆破して脱走する。戦争に圧しつぶされた男の苦悩を描く。
一九二三年九月一日、正午の激震によって京浜地帯は一瞬にして地獄となった。朝鮮人虐殺などの陰惨な事件によって悲劇は増幅される。未曾有のパニックを克明に再現した問題作。
第二次大戦中、杜絶した日独両国の連絡路を求めて、連合国の制海権下にあった大西洋に、数次にわたって潜入した日本潜水艦の闘いを描いて、文藝春秋読者賞を得たドキュメント小説。
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