愛した人は、殺人者かもしれない――。
かつてフィギュアスケーターとして活躍し、引退後はデザインの仕事をする塩澤。
彼と好敵手として競り合い、今もトップスケーターの地位にある志藤。
互いに、自分の持たないものを持つ相手として意識し続ける二人だが、塩澤にはライバル心だけではない、ひた隠しにするもうひとつの思いを抱き続けていた。
ある日、塩澤の昔の恋人であり、志藤とは犬猿の仲であったコーチのミラーが転落死したとのニュースが入る。孤高のスケーターで敵も多かったミラーの死は、周囲に動揺をもたらす。あいつ、殺されたんじゃないか? 火のない所に煙は――とばかりに広がる不穏な噂に搦めとられるように、塩澤と志藤は互いにこれまでとは違う視線を向けるようになる。
告げるだけで重荷になると秘めた恋心、自分のために罪を犯したのではという疑心。二つの感情の狭間で、互いを守るための選択とは――。
『花束は毒』の著者が放つ、もうひとつの究極の選択!
恋心か、疑心か。あなたは正しい選択ができますか?
お正月気分も一段落したある夜、文春推理部に緊急召集が……! 年末年始に文春文庫から出た「おすすめミステリ」を喋ろうという企画です。
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